漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0689

2021-09-18 19:09:12 | 古今和歌集

さむしろに ころもかたしき こよひもや われをまつらむ うじのはしひめ

さむしろに 衣かたしき 今宵もや われを待つらむ 宇治の橋姫

 

よみ人知らず

 

 筵(むしろ)に衣を敷いて一人で寝ては、今宵も私を待っているのだろうか、宇治の橋姫は。

 冒頭の「さ」は接頭語で「さむしろ」は「むしろ」と同義。「衣かたしき」は独り寝の意。当時、共寝の場合は互いの衣の袖を敷いて寝た一方、独り寝では自分の衣敷くことになることから、この意味になったもの。この歌には「または、宇治の玉姫」との左注がついており、第五句には2種類が伝わっています。「さむしろ」「衣かたしき」と聞けば、やはり百人一首の名歌が思い出されますね。新古今集採録で、古今集のこの歌を本歌取りした一首です。

 

きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ

きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む

 

後京極摂政前太政大臣

(新古今和歌集 巻第五 秋歌下 第518番)