漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

【あやめ】 と 【しょうぶ】

2014-02-27 20:02:22 | 雑記
 実のところ、私はもともと植物に余り興味がないためにそちら方面の知識がほとんどありません。梅と桜の区別も怪しい(苦笑)ほどなのですが、準1級配当漢字のおさらいで「辞典」の 【菖】 の項を読んでいて、 【あやめ】 と 【しょうぶ】 が違う植物であることを初めて知ってかなりびっくりしました。


 「辞典」には、

【あやめ】
 アヤメ科の多年草。山野に自生。初夏、紫色や白色の花を開く。




【しょうぶ】
 サトイモ科の多年草。水辺に自生。葉は剣形で芳香があり、邪気を払うために五月五日の端午の節句に軒にさしたり湯に入れたりする。初夏、淡黄色の小花を円柱状につける。根茎は薬用。



とあります。
(「辞典」P.746に掲載。写真は「季節の花 300」 http://www.hana300.com/ からお借りしました。ありがとうござます。)



 漢字表記はどちらも 【菖蒲】 なので、てっきり同じ植物で呼び名が2通りあるものだとばかり思っていましたが、 【あやめ】 を 【菖蒲】 と書くのは漢名からの誤用とのこと。まあいずれにしてもブログで白状するのが恥ずかしいような「新発見」ですが、知らないままになってしまわなくて良かったです。(笑)

熟字訓・当て字をどこまで覚えるか

2014-02-24 21:21:21 | 熟字訓・当て字
 昨日の 「漢検1級ブログ ボクちゃん日記PART2(漢検一級編)」 で、 【匹如身(するすみ)】 という熟字訓が紹介されていました。「財産も家族もなく、身一つであること。」との意味で、ネットで検索すると、徒然草にも出てくる言葉(第142段)のようです。で、この熟語は「漢検 漢字辞典」の見出しにある(P.1283)のですが、巻末の「熟字訓・当て字索引」には記載されていません。索引の注書きには、「・・・収録した熟字訓・当て字のうち、重要なものを選び、・・・」とあり、「辞典」の編集者が重要と考えたものだけが索引に掲載されているということになります。

 さてそこでいつも悩むのは、本文にあって索引にないものを、漢検対策として学習の対象とするかどうかです。感覚的に、索引にないものはほとんど出題されないという認識でいましたが、この機会に手元にある平成15年度以降の本試験問題を調べてみました。


 <延べ出題熟語数>     330  (1回あたり10問×年3回×11年分)
 <重複を除いた熟語数>   202
  その内、
   <索引にあるもの>   198
   <索引にないもの>     4


 索引にない4つの熟語は以下です。(かっこ内は「漢検 漢字辞典」初版の掲載ページです。)

1. 【踏鞴】  たたら  (1146)
 この語は索引にないだけでなく、「辞典」の見出しにもありません。 【蹈鞴】 の項に「『踏鞴』とも書く。」と小さく記載されているだけです。 【踏】 が 【蹈】 の書き換え字なので、「辞典」の編集者がもともとの表記である 【蹈鞴】 の方を見出しと索引に入れ、 【踏鞴】 は入れなかったのでしょう。一方、本試験では見出し・索引にない 【踏鞴】 の方が3度(15-1、18-1、21-3)出題されていますので、掲載はなくともこちらも覚えておくべきでしょう。(【蹈鞴】 は 19-3 の1度。)

2. 【行器】  ほかい  (479)
 20-1 で出題。

3. 【日照雨】 そばえ  (-)
 24-2 で出題。これは索引以前に、そもそも「辞典」に掲載されていません。満点阻止問題ということでしょうか。しかし受検者の側からすると、この出題はやっぱり反則ですよねぇ。(汗)

4. 【儒艮】  ジュゴン   (677)
 24-2 で出題。この語はそもそも 【ジュ】 も 【ゴン】 もそれぞれの漢字本来の読みで読め、かつ 【ジュゴン】 が外来語などではない(そうなのか??)ので、「辞典」はこれを熟字訓・当て字扱いしていません(凡例にそう書いてあります)。熟字訓・当て字扱いしていないから索引にもないということなのですが、そう言いながら、本試験で熟字訓・当て字の問題として出題するというのは、これまた反則のような気がしますがいかがでしょう?



 いろいろ書きましたが、重複を含めた全出題総数330問のうち上記4つで計6問ですから出題率は僅か1.8%。結論としては、200点満点を狙うのでもないかぎり、熟字訓・当て字に関しては索引にある語だけを学習対象とすれば良く、それだけでほぼ10点満点、運が悪いときでも9点は確保できるということになりそうです。(【日照雨】 と 【儒艮】 が同時に出題された 24-2 だけは例外。) もっと言えば、合格を勝ち取るための勉強の効率という観点では、熟字訓・当て字は過去問だけに絞り、残った時間や労力は他の分野に注ぐべきなのかもしれませんね。

 などと言いつつ、私自身が実際はどうしているかというと、この 【匹如身(するすみ)】 のように索引になくても印象深い言葉は覚えようとしてしまいます。試験に出る出ないはともかく、勉強を通じて魅力ある日本語にしばしば出会えるのが、漢検に取り組むことの大きな喜びですね。 ^^



準1級配当漢字の復習から

2014-02-23 15:04:13 | 演習問題
 準1級漢字の「自分辞書」作成、6割程度のところまで来ました。漢字そのものはさすがに「見たことなかった!」みたいなものはないですが、訓読みや熟語、用例などは自分のものにできていないものが次々と出てきて、楽しいやら情けないやらという感じです。問題形式で、いくつかご紹介します。



<熟語の読み・一字訓読み>

1. 【外套/套ねる】
2. 【嘉猷/猷る】


<書き取り>

3. 【ひせき】 の心。
4. 【こちゅう】 の天。
5. 【がんか】 の電
6. 【はくしゅう】 の操。
7. 【そばく】 に烏有り。
8. 【こうぎょ】 の泣。
9. 【ちとう】 春草の夢。
10. 【こきゅう】 の戒め。



<語選択書き取り>

11. 心静かにすわり、雑念を捨て、無我の境地にいたること。
12. もらった手紙を繰り返し読むこと。
13. とりとめのないこと。でたらめなこと。また、そのようす。
14. 完全に成し遂げること。
15. 書物をあらわすこと。本を書きあげること。

もうろう   せんじゅつ   けいふく   ざぼう   しったん  


16. 陰暦八月の異名。
17. 大いになげくこと。また、深いため息。
18. すわることと立つこと。立ち居振る舞い。
19. 涙がとめどなく流れ落ちるさま。
20. 谷川の流れ。

ざさ   かんすい   こうたん   れんれん   けいしゅう  



<解答>
(かっこ内は、「漢検 漢字辞典」初版の掲載ページです。)

1. 【がいとう/かさ・ねる】  (1133)
 「かさ・ねる」との語義・訓読みは認識していませんでした。言われてみれば、「常套」と「外套」では「套」の意味が違いますね。

2. 【かゆう/はか・る】  (1498)
 「嘉猷」とは、「りっぱなはかりごと。」の意。

3. 【匪石】 の心。  (1268)
 心や志が堅固であることのたとえ。心は石ではないから、石のようにころがしてかえさせることはできない意から。

4. 【巌下】 の電。   (255)
 眼光が明るく輝いて鋭いさま。

5. 【柏舟】 の操。  (1228)
 夫が死んだのちも、妻が貞操を守ること。

6. 【壺中】 の天。   (452)
 世俗を離れた別世界。また、酒を飲み、世俗を忘れる楽しみ。

7. 【楚幕】 に烏有り。 (918)
 敵の陣中に人影がないことのたとえ。楚の陣営にカラスがいるということは、人気のない証拠の意から。

8. 【皐魚】 の泣。  (499)
 親の死を嘆き悲しんで泣くたとえ。

9. 【池塘】 春草の夢。  (1141)
 学問の道を志した少年時代の大きく楽しい夢が、老いの身にとってはまことにはかないことのたとえ。
 「少年老い易く学成り難し/一寸の光陰軽んずべからず」 の後に、 「未だ覚めず池塘春草の夢/階前の梧葉已に秋声」 と続きます。

10. 【狐丘】 の戒め。  (449)
 人は、地位や収入が高くなればそれだけ他人から恨みをかうので身を慎むようにという戒め。

11. 【坐忘】   (543)

12. 【圭復】   (384)

13. 【孟浪】   (1465)
  「まんらん」とも読む。

14. 【悉曇】   (642)

15. 【撰述】   (899)

16. 【桂秋】   (388)

17. 【浩歎/嘆】   (494)

18. 【坐作】   (543)

19. 【漣漣】   (1590)

20. 【澗水】   (242)




【樗蒲一】

2014-02-22 21:26:45 | 雑記
 「漢検 漢字辞典」で準1級配当漢字のおさらいを続けていますが、 【樗蒲一】 という熟語に出会いました。 (「辞典」 P.1044)


【樗蒲一】  ちょぼいち
 1. 中国から伝わった賭博の一種。一つのサイコロで出る目を一つ予測し、当たれば賭け金の四倍が戻るもの。
 2. 人をごまかすようなこと。いんちき。
 (由来) 【樗(ごんずい)】 と 【蒲(かわやなぎ)】 の実をサイコロとして用いたことから。


 漢検には出題されそうもない語ですが、その昔、「麻雀放浪記」という映画の中で、鹿賀丈史さん演ずるバクチ打ちがイカサマをしかけてきた相手に向かって「どこの世界にこんなチョボイチにひっかかって銭払う奴がいるかいっ!」と怒鳴るシーンがありました。この「チョボイチ」の部分、全体の流れから意味は想像がついたものの、言葉としては今に至るまで知りませんでした。漢字もあって、かつ、辞書に載るような言葉なんですね。映画を見てから30年もたった今になって、私としては「礑(はた)と膝を打つ」ような発見でした。

 傍から見ると「それがどうしたの?」という感じかもしれません(笑)が、漢字の勉強をやめられなくなる瞬間ですね。