漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 259

2023-12-31 05:52:21 | 貫之集

ふりしける ゆきかとみゆる つきなれど ぬれてさえたる ころもでぞなき

降りしける 雪かと見ゆる 月なれど ねれてさえたる 衣手ぞなき

 

降りしきる雪かと思われるほどの月の光であるけれども、濡れて寒々とした袖とはならない。

 

 月の光を雪に見立てての詠歌。逆に雪を月の光と見た 065 と発送は同じですね。

 

 今日は大晦日。貫之歌に毎日おつきあいをいただきまして、ありがとうございました。
 明日からもどうぞよろしくお願いします。 m(_ _)m


貫之集 258

2023-12-30 05:33:56 | 貫之集

たなばたは いまやわかるる あまのがは かはぎりたちて ちどりなくなり

たなばたは いまや別るる 天の川 川霧立ちて 千鳥鳴くなり

 

織姫と彦星は今、別れて行くのか。天の川に川霧が立って、千鳥が鳴いている。

 

 逢瀬を待ちわびる 257 と対をなす一首。
 この歌は新古今和歌集(巻第四「秋下」 第327番)に入集しています。
 


貫之集 257

2023-12-29 05:59:40 | 貫之集

ひととせを まちつることも あるものを けふのくるるぞ ひさしかりける

一年を 待ちつることも あるものを 今日の暮るるぞ 久かりける

 

一年間待った逢瀬の日がやってきたというのに、今日一日が暮れる時間のなんと長いことよ。

 

 「一年を 待ちつる」とは、もちろん七夕のこと。織姫、彦星の気持ちになって詠んだ一首ですね。


貫之集 256

2023-12-28 06:08:26 | 貫之集

さつきくる みちもしらねど ほととぎす なくこゑのみぞ しるべなりける

五月くる 道も知らねど 時鳥 鳴く声のみぞ しるべなりける

 

五月がどういう道を通ってやって来るのかわからない。時鳥の鳴く声だけがその訪れを知るたよりであったよ。

 

 時鳥を五月のしるべとする類歌が 320 にも登場します。


貫之集 255

2023-12-27 06:59:59 | 貫之集

ゆくつきひ おもほえねども ふぢのはな みればくれぬる はるぞしらるる

行く月日 思ほえねども 藤の花 見れば暮れぬる 春ぞ知らるる

 

過ぎ行く月日に気づかなかったけれども、藤の花を見ると春が暮れて行くのがおのずと知られることよ。

 

 何かをきっかけに時の経過や季節の移ろいにはたと気づく、というのは現代人にもしばしばある感覚ですね ^^