漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 198

2023-10-31 04:49:55 | 貫之集

としごとに おひそふたけの よよをへて たえせぬいろを たれどかはみむ

年ごとに おひそふ竹の よよをへて たえせぬ色を たれとかは見む

 

年ごとに生えて来る竹の、世を経ても絶えることのない色を、どなたのお姿として見ましょうか。お変わりのないあなたさまのお姿にほかなりません。

 

 188 からの宇多法皇六十歳祝賀の歌はここまで。貫之集第二巻ものこり二十首ほどとなりました。


貫之集 197

2023-10-30 04:35:50 | 貫之集

きくのはな したゆくみづに かげみれば さらになみなく おいにけるかな

菊の花 下行く水に 影見れば さらに波なく 老いにけるかな

 

菊の花の下を流れる水に映る影を見ると、まったく波がたっていない。そんな水面と同じように顔に皺も寄らずに歳を重ねているのですね。

 

 菊の花が持つという長寿の効用を、少し違う角度から詠んだ歌ですね。


貫之集 196

2023-10-29 05:52:29 | 貫之集

いかでなほ きみがちとせを きくの花 をりつつつゆに ぬれむとぞおもふ

いかでなほ 君が千歳を 菊の花 折りつつ露に ぬれむとぞ思ふ

 

なんとかあなたさまのご長寿を聞こうと、菊の花を折ってはその露に濡れようと思います。

 

 第三句「きく」は「聞く」と「菊」の掛詞になっていますね。菊に長寿の効用があるという、貫之集でもたびたび出て来るモチーフの詠歌です。


貫之集 195

2023-10-28 04:41:15 | 貫之集

鶴の群れゐたるところ

かのみゆる たづのむらどり きみにこそ おのがよはひを まかすべらなれ

かの見ゆる 田鶴の群鳥 君にこそ おのがよはひを まかすべらなれ

 

鶴が群れているところ

あそこに見えるたくさんの鶴たちは、あなたさまに自分たちと同じ長寿を与えようというのでしょう。

 

 「おのがよはひ」、つまりは千年の長寿ということでしょうか。「鶴は千年」という言葉は当時からあったのかな?


貫之集 194

2023-10-27 06:12:08 | 貫之集

こけながら おふるいはほの ひさしさを きみにくらべむ こころやあるらむ

苔ながら 生ふる巌の 久しさを 君にくらべむ 心やあるらむ

 

苔とともに長い間をかけて大きくなった巌には、その長い年月をあなたさまのご長寿と比べようとする心があるのでしょうか。

 

 詞書は一つ前の 193 と共通で「巌」。巌と言えばやはり思い浮かぶのは「君が代」ですね。そのもととなった和歌は古今和歌集343 に採録されています。

 

わがきみは ちよにやちよに さざれいしの いはほとなりて こけのむすまで

わが君は 千代に八千代に さざれ石の いはほとなりて 苔のむすまで

 

よみ人知らず

(古今和歌集 巻第七「賀歌」 第343番)