あひ知れる人の亡せたるによめる
ゆめとこそ いふべかりけれ よのなかは うつつあるものと おもひけるかな
夢とこそ いふべかりけれ 世の中は うつつあるものと 思ひけるかな
互いに知っている人が亡くなったので詠んだ歌
この世ははかない夢であるとこそ言うべきであったのだ。あのひとと共に生きたこの世の中には、確かな現実があると思っていたけれども。
現実と思っていた世の中は、親しい知人を亡くしてみると、実は儚い夢であったのだと実感されたという詠歌。悲しい歌ですね。
この歌は、古今和歌集(巻第十六「哀傷歌」 第834番)、拾遺和歌集(巻第二十「哀傷」 第1318番)に入集しています。
本日から、貫之集第八「哀傷」の歌のご紹介です。