漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0183

2020-04-30 19:12:37 | 古今和歌集

けふよりは いまこむとしの きのふをぞ いつしかとのみ まちわたるべき

けふよりは 今来む年の きのふをぞ いつしかとのみ 待ちわたるべき

 

壬生忠岑

 

 今日からは、今からの一年間の昨日という日を、いつになったらやって来るのかと、待ち続けなければいけないのだなあ。

 詞書には「八日の日よめる」とあります。七夕の逢瀬が終わってしまい、また1年後の昨日(七月七日)が来るのを、日一日と待ち続けなければならない切なさを詠んでいます。

 

 さて、今日は4月末日。昨年10月末日から始めた一日一首の古今和歌集ですが、何とか半年間欠かさずに続けてくることができました。新型コロナウイルスの影響で外出もままならず、週の大半を在宅勤務で過ごすことになるなど半年前にはとても想像できませんでしたが、このブログを書いている時間は落ち着かない気分も多少は薄らいで、穏やかな気持ちでいられる気がします。

 読んでくださっている皆さま、ありがとうございます。気の向かれた日には、またおつきあいください。

 よろしくお願いいたします。 m(_ _)m

 

 


古今和歌集 0182

2020-04-29 20:03:51 | 古今和歌集

いまはとて わかるるときは あまのがは わたらぬさきに そでぞひちぬる

今はとて 別るる時は 天の川 渡らぬさきに 袖ぞひちぬる

 

源宗于

 

 これでお別れというときには、天の川を渡るより先にもう涙で袖が濡れてしまうよ。

 こちらは彦星の想いを詠んだ歌。作者の源宗于は古今和歌集に六首入集していますが、0024 以来久しぶりの登場。「春歌」「秋歌」「冬歌」に各一首と、「恋歌」に三首が採られています。

 


古今和歌集 0181

2020-04-28 19:54:22 | 古今和歌集

こよひこむ ひとにはあはじ たなばたの ひさしきほどに まちもこそすれ

こよひ来む 人にはあはじ たなばたの ひさしきほどに 待ちもこそすれ

 

素性法師

 

 今夜来る人には逢うまい。あの織姫のように、長い間待ち焦がれるようになるといけないから。

 今夜、これからやってくるはずの人。逢いたい気持ちはあるけれど、逢ってしまうとさらに恋心が募り、彦星と会えるのを1年間待ち続けている織姫のようになってしまいそうだから逢うのはよそう、というわけです。素性法師はもちろん男性ですが、女性の立場で詠んだ歌ですね。

 


古今和歌集 0180

2020-04-27 19:14:47 | 古今和歌集

たなばたに かしつるいとの うちはへて としのをながく こひやわたらむ

たなばたに かしつる糸の うちはへて 年の緒長く 恋やわたらむ

 

凡河内躬恒

 

 七夕に供える糸が長く延びていくのと同じように、何年も何年もの長い間、私は恋慕い続けるのだろうか。

 作者自身の恋心ではなく、織姫と彦星の恋が永く続いていくことを詠んでいるのでしょう。

 

 

 


古今和歌集 0179

2020-04-26 19:45:01 | 古今和歌集

としごとに あふとはすれど たなばたの ねるよのかずぞ すくなかりける

年ごとに あふとはすれど たなばたの 寝る夜の数ぞ すくなかりける

 

凡河内躬恒

 

 毎年逢うことは逢うけれど、織姫と彦星が共寝をする日数は少ないことだ。

 1年にたった一度しか逢えないことを嘆く歌で、ひとつ前の 0178 と同じ趣向ですね。