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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

続・初めての合格のために その8  ~まとめ~

2015-03-04 00:02:15 | 初めての合格のために
 「初めての合格のために」の続編、一旦今回で区切りとしたいと思います。そこでこれまでのまとめと、少しの追記を。



<最初に揃えるもの>

(1) 「漢検1級 完全征服」
(2) 「漢検1級 分野別精選演習」
(3) 「漢検1/準1級 過去問題集」(「平成22年度版」以降)
(4) 「漢検 漢字辞典」 (できれば初版・第二版両方)
(5) 「漢検 四字熟語辞典」



<取り組み>

第1ステップ
 上記(1)~(3)を徹底的にやり尽くす。ただし、以下の部分は除きましょう。
   (1)のうち、「熟字訓・当て字」の地名・国名問題。
   (2)のうち、「熟字訓・当て字」の地名・国名問題 及び 「複数の漢字表記」分野。
 また、(1)(2)の四字熟語問題には下位級配当のものも含まれています(特に(1)にはかなりの数)ので、「漢検 四字熟語辞典」で配当級を確認し、下位級配当のものは学習対象から外しても良いと思います。ただ、再び出たりもするので、余力があれば、あるいは下記の「ステップ3」の段階では、やっておきたいところです。

第2ステップ
 第1ステップ部分を忘れてしまわないように復習を繰り返しつつ、1級配当四字熟語を網羅。第1ステップに出てこなかった1級配当四字熟語を「漢検 四字熟語辞典」で拾いながら、
   ・読み
   ・意味
   ・出されそうな方の2文字(熟語によっては4文字とも)の書き取り
をマスターしていく。
その際、「覚えなくてよい(よさそうな)もの」を除外して「覚えることを減らす」のも効率化のためには大切。

第3ステップ
 第2ステップまで終えたら、もう合格は秒読みです。これまでの成果を復習で維持しつつ、「+α」の取り組みを。
   ・過去問を隅々まで渉猟。読み問題は書けるように。問われていない箇所もできるように。
   ・リピーターのブログなど、ネットを活用して少しずつ1級漢字と語彙、故事・諺を増強。
   ・その際、訓読みは「辞典」初版に掲載されているものに注力。
   ・ネットで公開されている模擬試験問題にチャレンジ。
   ・知らない熟語に出会ったら、「その漢字が使われている知っている熟語」を想起する練習を。



<その他>

☆ 本試験は毎回受ける
 こんなことを書くと協会の回し者のよう(笑)ですが、ある程度勉強が進んで本試験にチャレンジしたら、以後は毎回受検しましょう。初回チャレンジが余りにも「手も足も出ない」状態だったら改めて力を溜めてから、というのも良いと思いますが、100点以上取れていたら以後は合格まで継続して受検することをお勧めします。理由は、
   ・結果的に合格まで数回を要したとしても、実力の伸びが証明でき、モチベーション維持に役立つこと。
   ・自宅での問題演習とは異次元の緊張感、真剣度で問題に取り組めること。
   ・「問題を解く勘」が養われ、維持できること。
   ・回を重ねることで、普段通りの力が本試験でも出せるようになって行くこと。
です。

☆ 焦らず地道に根気よく  自分なりのモチベーション維持方法で
 1級合格にはどのくらいの期間の勉強が必要でしょうか? 当然、漢検の勉強に割ける時間が人によって違いますから何とも言えませんが、長く苦しい道のりであることは確か。ちなみに私の場合は、準1級に合格してから正味1年ほどでした。その間、どうやってモチベーションを維持するかが、合格への最大のポイントでしょう。こればかりは他者のアドバイスはほとんど参考になりません。自分なりの方法が必要であり、またそれがもっとも効果的です。相当の時間と労力を要することは始めからわかっているのですから、焦らず地道に力をつけて行きましょう。



 さて、このシリーズもこれで終了です。すでに勉強を重ねてきている皆さん、ぜひ6月の本試験で合格を果たしましょう! これから1級の勉強を始める皆さん、漢検対策に専念できる方なら10月、そうでない方でも来年2月の本試験での合格は十分可能です。頑張って行きましょう!!


続・初めての合格のために その7  ~「+α」として何をやるか~

2015-03-01 08:21:54 | 初めての合格のために
 過去問と1級四字熟語を一通り網羅できたら、合格まではあと少しです。その「あと少し」を埋めるために「+α」として何をやるか? やはりまずはここからでしょう。


<過去問を教材として活用し尽くす>

 すでに書きましたが、過去問は出題ネタの宝庫です。「過去問がそのまま出たら100%正解できる」ようになったら、次になすべきは、「過去問がらみはどんな形で出されても対応できる」ようにすることでしょう。
  ・読み問題は、書き取りで出されても書けるようにする。
  ・音読み問題は、対応する訓読みを調べて、設問(七)「熟語の読み・一字訓読み」対策の問題を自作する。
  ・直接問われていない箇所が次回出されても対応できるようにする。(特に(九)の故事・諺問題。)
 実際に、過去問が上記のように形を変えて出題されることは多々あり、これらの勉強法は非常に有用です。



 さて、それ以外では何を、となると特効薬みたいなものはありませんが、私のお勧めは以下の通りです。


<四字熟語を読み下す>

 「漢検 四字熟語辞典」の 【敲金撃石】 の項(P.189)には、「補説」欄に「『金を敲(たた)き石を撃つ』とも読む。」との記載があります。このように四字熟語を読み下すことは、その四字熟語の意味を理解するのに有効であることに加え、1級配当漢字の訓読みを学習するのにも役立ちます。「四字熟語辞典」には、多くの熟語にこうした補説の記載がありますので、一通りの学習を終えた上での「+α」の段階では、ぜひ活用しましょう。


<漢検協会以外から出されている問題集にも手を出す>

 1級に対応した問題集も、少ないながらも出版されています。どれも一長一短で、正直なところ「これだ!」というようなものはないのですが、その中では、成美堂出版の「本試験型 漢字検定1級試験問題集」が、「+α」を積み上げる手段としては有用ではないかと思います。理由は、
  ・今の出題形式に合致していること。
  ・過去問にない問題も比較的多く収録されていること。
  ・出題されないであろうと思われる問題(前回の記事で、「覚えることを減らす」観点で、学習対象から除外したようなもの)が比較的少ないこと。
です。
 その他についてはぜひご自身で実物を確認ください。自分にフィットする、と思えれば教材として追加すると良いでしょう。


<リピーターのブログを活用する>

 一例をあげますと、私自身、新出の故事・諺問題対策としては、「学然後知不足 教然後知困」というサイト大変お世話になっています。
 ブログは作成者の思い・考え方によって、紹介されている問題の傾向や難易度もさまざまですので、市販問題集と同様、ご自身の勉強の段階ややり方にフィットするものを見つけて活用することが大切と思います。

続・初めての合格のために その6  ~覚えることを減らす~

2015-02-22 16:54:29 | 初めての合格のために
 漢検1級の範囲は厖大です。6000字のすべての漢字のすべての音訓、さらにそれらの組み合わせの熟語すべてを見据えてその8割を記憶することなど、とても人間業でできることとは思われません。なのでいかに効率よく学習して本試験で160点を取るかがこの一連の記事の主眼なわけですが、そのためにはそもそもの入り口で「覚えるべきことを少なくする」ことも重要です。今回は、そんなことについて書いてみます。



1. 覚える音訓を減らす

 過去問はとにかくそのまま出されたら反射的に正解できるまで徹底的に、と書きました。つまり始めは、出てきた漢字に他に音訓があっても、まずはそれは無視してひたすら問題にたくさん触れて過去問で問われた音訓を覚え行くことをお勧めします。しかしそれだけでは合格までは行きつきませんので、一定の基礎力が着いた段階からは、やはりそれ以外の音訓も覚えて行くことになります。
 しかし、その追加で覚えるべき読みはその漢字にある音訓すべてかと言えば、そんなことはありません。結論から言えば、160点を取るための音訓は、「漢検 漢字辞典」初版に掲載されているものだけで十分 だと思います。

 もともと、漢検協会が定める正式な出題範囲は、「漢検要覧 1/準1級対応」に記載されている漢字とその音訓です。一方、「漢検 漢字辞典」初版に掲載されている音訓(特に訓)は、それより大幅に少ないものであり、また少なくとも平成15年以降、「辞典」初版に載っていない音訓が問われたことはありませんでした。昨年、「辞典」が改訂されて第二版となり、記載されている音訓(これも特に訓)が大幅に増加したことはリピーターの間でも大変話題になっており、今年6月の試験以降はこの追録された訓も実際に出題されるのではないかと推測する向きが多い(私もそう思っている者の一人です)のですが、確かに出題はされるようになるかもしれませんが、それが相当の比率を占めるようになるとは、どう考えても思えません。出されたとしても、1回の本試験でせいぜい2~3問どまりではないでしょうか。私がそう思うのは、単にいままでの方針を急に大幅には変えないだろうと思うからだけではなく、そもそも「初版」にその読みが採録されているのは、その漢字の読みの中でも重要だからそうなっていたはずと考えるからです。まったくの私見ですが、「辞典 初版」は、「要覧」に掲載されている厖大な音訓の中から、本試験で問われやすい重要な読みがどれであるかを示してくれる貴重な資料になったと言えるのではないでしょうか。



2. 覚える四字熟語を減らす

 シリーズの「その3」で少し触れましたが、「漢検 四字熟語辞典」に1級配当として掲載されている四字熟語(約1100語)の中には、覚える必要がないと思われるものがそれなりに含まれています。どれを「覚える必要がない」と考えるかはリピーターの間でも考えの相違があり、最終的にはご自身の判断ということになりますが、私が考える「覚える必要のない四字熟語」は、例えば以下のようなものです。

a) 漢検配当外漢字が含まれているもの
 これは「覚える必要のないもの」の筆頭でしょう。異論のある方も少ないことと思います。

b) 意味内容からして出題されないと思われるもの
 ここは主観がかなり入るところですが、例えば以下のような熟語は覚えなくて良いと思います。(意味は書きづらいので省略。お手数ですが、各自でお調べください。)
  【合歓綢繆】 【雲雨巫山】 【折花攀柳】 【鳳友鸞交】 【桃花癸水】   など

c) 固有名詞(特に、余りメジャーでないもの)以外の部分の漢字がない、または易しいもの
  【王楊盧駱】 (初唐の詩人4名の名前を並べたもの)
  【瀟湘八景】 【渭浜漁父】 (【瀟湘】 【渭浜】 は地名)
  【鄒衍降霜】 (【鄒衍】 は人名)

 私は臆病な質(笑)なので余り大胆に学習範囲から除外することができず、約1000個の1級四字熟語を勉強の対象としていますが、あるリピーターの方は700個程度まで絞り込んでいらっしゃるそうです。これまで実際に本試験で問われた熟語はまだ300にも満たないですから、そういう意味では700個学習すれば、十分に「網羅した」と言えるのかもしれませんね。このあたりは、ぜひご自身で1級四字熟語すべてを確認する中で、個々の熟語を取捨選択いただければと思います。


 
3. 覚える熟字訓・当て字を減らす

 ここは比較的単純で、「過去問・完全征服・分野別にある問題だけを学習対象とし、かつ、地名・国名は除く」 で良いと思います。これまでの本試験の傾向からすれば少なくとも5~6問、多くの回では8問程度を正解することができるでしょう。熟字訓がお好きでさらに+αを、という方であれば、「辞典」巻末の「熟字訓・当て字索引」をすべて網羅(この場合も地名・国名は除外して良いでしょう)すれば、ほぼ毎回10点満点が期待できます。1700個ほど覚えれば得点源になるということですので、気の進む方にはお勧めします。



続・初めての合格のために その5  ~本試験中の思考(2)~

2015-02-21 22:52:39 | 初めての合格のために
 ここ最近の本試験の設問(五)では、「『漢検 四字熟語辞典』に掲載されている1級配当四字熟語」以外の四字熟語が、毎回必ず1~2問出題されています。従って知識として1級四字熟語を網羅していても本試験では知らない熟語に出くわすことになるのですが、それでも先日の 26-3 では、多くのリピーター受検者は28点程度を取っているようです。私も28点でした。どこまで参考になるかわかりませんが、本試験中の設問(五)への取り組みを振り返ってみます。

 今回、設問(五)は以下のような問題でした。


<四字熟語>
ア  ( 1 )渡河     イ  ( 2 )失路     ウ  ( 3 )玉折
エ  ( 4 )巻舒     オ  ( 5 )不食     カ  爬羅( 6 )
キ  杯盤( 7 )     ク  墜茵( 8 )     ケ  天門( 9 )
コ  南郭( 10 )

<語群>
かいこう  さんし  せいき  せいせつ  たくらく  てきけつ  らくこん  らんさい  らんすい  ろうぜき

<意味>
11.  実力があるように見せかける。
12.  賢者が登用されないままでいること。
13.  人には運不運がある。
14.  退けられて出世できなくなる。
15.  戦に明け暮れること。


 このうち、「ウ・エ・オ・カ・キ・ク・ケ」 は、「漢検 四字熟語辞典」に1級配当として掲載されている熟語そのままです。従って、1級四字熟語を知識として網羅できていれば、これらは書き・意味とも正解できることになります。結果、残るのは、

<四字熟語> ア  ( 1 )渡河     イ  ( 2 )失路     コ  南郭( 10 )
<語群>   さんし  たくらく  らんすい
<意味>   11.  実力があるように見せかける。    14.  退けられて出世できなくなる。

となり、ここから思考を巡らすことになります。

 まず、「ア」の熟語と語群の「さんし」から、すぐに四字熟語 【三豕渉河(さんししょうか)】 が思い浮かびました。「四字熟語辞典」の 【三豕渉河】 の項に類義語として 【三豕渡河】 が載っていることは知らなかったのですが、まあここはこれで正解だろうと推測がつきました。これで、熟語・語群・意味すべて2つずつ未解答のものが残ったので、これをどう組み合わせるかということになります。

 次いで考えたのは、意味から逆に熟語を推定することです。なお最近の傾向として、1級配当以外の熟語が出題されるときは、ほぼ必ずその問題が意味を問う問題の答えになっていて、それが逆にヒントになっていることが多いです。今回もそうでした。残った二つの四字熟語はまったく知らなかったのですが、意味の方を見ていて、

  「退けられて出世できなくなる」意は、熟語「イ」の 【失路】 に現れているのではないか。

と考えました。そこで意味の 「14.」 は 「イ」 、最後に残った 「11.」 は 「コ」 であろうと推測し、実際にそれで正解でした。今回、ここからの上積みには「+α」の知識が必要だったのですが、ここまででも設問(五)について26点が確保できたことになります。26-3 で初合格を果たす上では、(五)で26点を取れれば、大きな武器となったことでしょう。

(ちなみに 「コ」 の正解は 【濫吹】、「イ」 の正解は 【拓落】 でした。前者は、【濫充数】 の関連の二字熟語としてたまたま知っていましたが、後者は厳しかったですね。使われている漢字は易しいですが、四字熟語としては「漢検 漢字辞典」にしか載っていない難問でした。)



 さて、四字熟語が直接問われる設問(五)を取り上げてお話ししましたが、それ以外に、今回私が1級四字熟語の知識をもとに解答した問題を参考として拾ってみました。(五)以外に全部で24点分。つまり合計で約50点分について、四字熟語の知識に助けられたことになります。(かっこ内は、「漢検 四字熟語辞典」初版の掲載ページです。)
 1級四字熟語の知識が本試験問題の広い範囲で助けになることの実例として、ご覧ください。


(一)
1.  日昃  にっしょく   ←  【日昃之労】   (374)
6.  和煦  わく   ←   【翼覆嫗煦】   (462)
7.  俛伏  ふふく   ←   【俛首帖耳】   (417)
15.  斃仆  へいふ   ←   【桃傷李仆】   (360)
18.  殫竭  たんけつ   ←   【甘井先竭】   (137)
20.  銜恤  がんじゅつ/かんじゅつ   ←   【銜尾相随】   (140)  他

(四)
4.  掣肘   ←   【旁時掣肘】   (433)

(八)
5.  殷富   ←   【万物殷富】   (395)

(九)
3.  蒼蠅   ←   【蒼蠅驥尾】   (311)
4.  纓   ←   【濯纓濯足】   (322)
5.  蹊   ←   【桃李成蹊】   (363)
6.  鄒魯   ←   【鄒魯遺風】   (280)

(十)
10.  社稷   ←   【社稷之守】   (243)
ア.  黜陟  ちゅっちょく   ←   【黜陟幽明】   (335)
キ.  搏噬  はくぜい   ←   【竜攘虎搏】 (471)  【後悔噬臍】 (186)  他
ケ.  綢繆  ちゅうびゅう   ←   【綢繆未雨】   (334)  他
コ.  偸安  とうあん   ←   【苟且偸安】   (193)


(  は島根県立大学e漢字フォント  の漢字フォントを使用しました。)

続・初めての合格のために その4  ~本試験中の思考(1)~

2015-02-21 08:43:56 | 初めての合格のために
 4回目です。

 受検者の方とのお話しやブログ・メールでのやり取りの中で、「過去問そのままの問題は良いのだが、形を変えられたりすると、正解を導くための連想ができない。」「自分以外の受検者が、問題に対して辿った思考の迹を読むのが非常に参考になる。」といったことをお聞きすることがあります。そこで今回は、先日の 26-3 の問題を例に、正解に到達するための本試験中の思考パターンについて書いてみたいと思います。

 26-3 の分析結果として「過去問と1級四字熟語の知識で正解できる問題(分類A~C)」で121点取れるということを書きましたが、「そのものズバリ」でない問題について、これらの知識に基づく連想や類推で解けるかどうかはかなり保守的に見ていますので、「分類E」とした問題(79点分)の中にも、これらの知識で正解しうる、あるいは正解を二者択一くらいまで絞れる問題というのも相応に含まれています。そんな問題や、過去問そのものでも忘れてしまった問題などについて正解に近づくための参考になれば良いのですが。



1.わからない音読みは音符で読む

 これは改めて書くほどのことではなく、皆さん自然に実践されていることだと思いますが、漢字にはその成り立ちとして、意味を表す部分(「意符」または「義符」といいます。)と、音を表す部分(「声符」または「音符」といいます。多くは、部首でない部分です。)からできているもの(「形成文字」といいます)が数多くあります。漢字の成り立ちとしてはこの「形成文字」が圧倒的に多いのですから、わからない音読みを問われたら、その漢字の一部分に注目して読みを推定することが有力です。

 【坡陀】
 26-3 (一)3. の問題ですが、これは「分類A」の中にはありません。私に到っては恥ずかしながら 【坡】 という漢字を見た記憶もなく、当然読み方も知りませんでした。ですのでここは「音を表すであろう部分」に着目です。 【土】 は部首でしょうから、音を表すのはおそらくは 【皮】 。ですのでこの漢字の音読みは「ハ」か「ヒ」であろうとの推測が成り立ちます(実際にこの漢字の音は「ハ」または「ヒ」でした)。ここから先は感覚になってしまいますが、私は「ハ」の方を採用して「はだ」と解答、無事、正解でした。
 その他にも今回の音読み問題の中では、
   【娶嫁(しゅか)】    【娶】 の 【取】、【嫁】 の 【家】 が音符
   【和煦(わく)】     【煦】 の 【句】 が音符
   【車(じしゃ)】    【】 の 【而】 が音符
   【駐紮(ちゅうさつ)】  【紮】 の 【札】 が音符
など、仮に音読みを知らなくても正解できるものが少なくありません。もちろん、音符の読み方自体が複数あったり、時の経過とともに読みが変化している漢字もあったりということはありますが、少なくとも、単なるあてずっぽうで書くよりは、はるかに高い確率で正解に辿りつけるでしょう。



2.同じ音符の漢字は同じ音ではないかと推定する

 本質的に上の「1.」と同じことですが、同じ音符を持つ漢字は音読みも同じである可能性が高い、ということになります。ほんの一例ですが、今回の問題では、
   【皴裂(しゅんれつ)】 の 【皴】 が 【俊】 【逡】 などから
   【緘黙(かんもく)】 の 【緘】 が 【感】 【鹹】 などから
読みを推定することが可能でしょう。



3.同じ漢字を使っている熟語・四字熟語を想起する

 このところ音読み問題は難化が著しく、「過去問そのまま」の出題が減少しているばかりでなく、そもそも熟語としては「辞典」にも載っていないものが数多く出題されています。従って本試験では、「漢字は見たことはあるが、熟語としては初見」という問題にたくさん出くわすことになります。しかしそこでうろたえてはいけません。その「見たことはある漢字」が使われていて、過去問の勉強などを通じて自分が知っている熟語を想起できるかが極めて重要です。本試験の振り返りの記事ですでに書いたことが多いですが、いくつか例を拾ってみます。

 【梳盥】   そかん
 【梳(そ)】 はもともと知っていましたが、26-1 で出題された 【書疏】 の 【疏】 からの推定も可能でしょう。 【盥(かん)】 の方は一瞬詰まったのですが、 【盥漱(かんそう)】 (頻出問題で、最近では 21-2 で出題。「分野別」の12ページにも載っています。)が想起できて、無事に正解。 【梳盥】 という熟語自体は初見でしたが、過去問の知識で正解に辿りつけた例です。

 【斃仆】   へいふ
 「分野別」25ページの 【薨死(へいし)】 と、1級四字熟語 【桃傷李仆(とうしょうりふ)】 から正解に到りました。

 【銜恤】   がんじゅつ/かんじゅつ
 こちらは「分野別」54ページの 【賑恤(しんじゅつ)】 と、1級四字熟語 【鳳凰銜書(ほうおうがんしょ)】 【銜尾相随(かんびそうずい)】 などから。「銜」を含む1級四字熟語は5つありますが、どれか一つ思い出せれば正解できる問題でした。

 この「想起する」ということが、学習開始当初にはなかなかできないかもしれませんが、繰り返し(=飽きるほど!)学習することによって徐々にできてくると思います。一定の基礎力がついた段階から、ネット上の模擬試験問題などで「想起」の訓練をすると良いかもしれませんね。



(  は島根県立大学e漢字フォント  の漢字フォントを使用しました。)