月島警察署かあ。最近は警察も大変だよなあ。
とくに、秋葉原の無差別殺人みたいな事件が起きるとねえ。
でも、警察の大変さっていうのは、ときどきドラマになるけど、刑務所の刑務官の大変さっていうのは、あまり見ないな。
門井肇監督の「休暇」は、その刑務所の刑務官の話。
死刑囚の刑が執行されることになって、その支え役をやる代わりに、1週間の結婚休暇をもらう刑務官を小林薫が物静かに演じている。原作は吉村昭。
死刑囚を西島秀俊が、これも、もの静かに演じている。
どんな事件を起こして死刑を宣告されたのか、まったく説明がない。
老夫婦の亡霊みたいなのが現れるんだけど、ヒントにすぎないしね。
妹が面会に来るんだけど、これまた、ひとことも会話を交わさない。
観ているほうがじれったくなるほど、沈黙のシーンが続くんだけど、それがかえって哀れさを誘うのよねえ。
主役たちはみんな、ことば数が少ないんだけど、そのぶん、ことばにできない心情がふつふつと伝わってくる。
西島秀俊、いいわよねえ。感情を抑えに抑えている彼が、最後に一度だけ感情を爆発させる。
この映画の脚本家が、彼でやくざ映画を撮りたいとか言ってたらしいけど、香港の渋いギャング役でも観てみたいな。
トニー・レオンが出ているような映画ね。
それにしても、刑務官には“支え役”なんていう仕事があるとは知らなかった。
首をくくって落ちてくる死刑囚を処刑台の下で支える、文字通りの“支え役”。
バタつく足を止まるまで支えておかなきゃいけない。それを小林薫は、自ら買って出てしまう。
そういう仕事を選んだんだっていう、静かな決意よね。
もう若くはないんだけど、子持ちの女性と結婚して、新しい家庭をつくりあげていくんだっていう決意なんだろうな。
普通の職業ではありえない決意よね。
しかも、死刑の日程が決まっても、当日まで死刑囚に悟られてはいけないなんて・・・。
死刑囚には、そのときになって突然、刑の執行を言い渡すんだけど、現実にもそうなのかしら。
だとしたら、それこそ怖いなあ。心構えも何もなく、突然「今から執行だ」って言われるんだぜ。
ほんと、死刑囚だけにはなりたくないなあ。この映画、犯罪抑止の映画になるかもね。
茶化すな。近頃の日本映画には珍しい、抑制の効いた、おとなの映画なんだから。
ああ、なんでもかんでも字幕を入れてしまうようなテレビ番組とは対極のつくりよね。
そのせいか、観客はほとんど入っていなかったけどな。
地味な映画だからね。でも、ほんとうに大切なことは一見、地味なことがらの中にあるものよ。
警察だって、日常は地味な職業なんだよな。
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でも家族を守るってすごいとも感じました。
異色作でした。