【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ある日どこかで」:築地六丁目バス停付近の会話

2010-03-17 | ★業10系統(新橋~業平橋)

ここ、波除稲荷といえば、災難を除き、波を乗り切る神社として有名よね。
クリストファー・リーヴも、ここにお参りしておけば、あんな事故には遭わなかったかもしれないな。
1978年にスーパーマン役に抜擢されたものの、その後、落馬事故で半身不随になってしまった俳優でしょ。
その伝説の役者が「午前十時の映画祭」で蘇った。1980年のアメリカ映画「ある日どこかで」。
古っ。
でも、その古色蒼然としたところが魅力なんだなあ。
まだ五体満足だったころのクリストファー・リーヴが時代を超えた恋を熱演している。
現代の脚本家が1910年代の女性の肖像写真に恋してしまって、時空を超えて会いに行くというファンタジックな話。
公開時にはそれほど騒がれなかったのに、そうそうたる名作が並ぶ「午前十時の映画際」に選ばれたとは驚きだった。
それほど起伏がある物語でもないしな。
そう思って観ていたら、これが思いのほか好感の持てる映画だった。
やっぱり、クリストファー・リーヴだろう。肖像写真の女性に一目惚れして時空を超えてまで会いにいくなんて役、ふつうの役者だったら臭くて見ていられない。でも、クリストファー・リーヴの屈折を知らない万年青年みたいなたたずまいが功を奏して、すんなり映画の中の世界へ入っていける。あらためて、いい役者だったと思ったよ。
相手役のジェーン・シーモアもまた、いまどき見かけないような清潔感ある女優だった。
それでいて、おとなの色気もある。
この二人の気持ちが近づいていくところを、ラフマニノフやジョン・バリーの甘美な音楽にのせてじっくりと見せていくだけなんだけど、じれったいほどゆったりと見せていくから、観ているほうも知らず知らず気持ちが高まってきちゃうのよね。
ポイントは、そこだ。近頃の映画は観客の気持ちが高まる前に映画の展開のほうが先に行っちゃうから、観客はおいてきぼりを食らうみたいな気分になっちゃうんだけど、昔の映画は決してそんなことなかった。
それを教えたいために、この映画が選ばれたっていうこと?
選者が、そう意識していたのかどうかはわからないけど、観ているとそういう思いが募ってくる。
マネージャー役の位置づけがよくわからないとか、懐中時計は結局誰が持っていたんだろうとか、チャチャを入れたいところもあるんだけど、久しぶりの正統派恋愛映画なことはたしかよね。
久しぶりというより、懐かしい。
それ以外、何もないんだけど、それだけでこれだけ情感ゆたかな映画ができあがるっていう見本のような映画だった。
でも、いまの若者たちは、まどろっこしくて、じっと観ていられないんじゃないか。きっと眠っちゃうやつもいるな。
“いま”という時代の波には乗っていないんでしょうね。
じゃあ、波除神社にお参りでもすればいいんだ。
だめよ、一層波に乗れなくなっちゃうわよ。
あ、そりゃそうだ。




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ふたりが乗ったのは、都バス<業10系統>
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