【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「スイートリトルライズ」:銀座西六丁目バス停付近の会話

2010-03-03 | ★業10系統(新橋~業平橋)

銀座のスイーツといえば、昔からウエストの洋菓子に決まっている。
ほんと?嘘じゃないでしょうね。
あれ、俺が嘘をつくような男に見えるか。
見える、見える。嘘で固めた男。
そりゃ、俺だって小さな嘘くらいつくけどな。
スイーツリトルライズ。
それを言うなら、「スイートリトルライズ」だろ。
矢崎仁司監督の恋愛映画ね。三年目の夫婦のダブル不倫の物語。
ファーストシーンから夫婦の会話がかみあわない。
ごく日常的な会話なんだけど、妻の問いに夫は答えず、別の話題を始める。
こんな会話、世間の夫婦にゃ、いくらだってあることだけどな。こういうところからすきま風が吹いてくるってことだ。
でも、演じるのが、中谷美紀と大森南朋だから、とても世間の夫婦って感じじゃない。
なにげないひとことでも、中谷美紀の口から発せられると、背筋がゾクゾクッてして怖いんだよな。
LOFT」とか「ゼロの焦点」みたいに、いつか何かがとり憑いちゃうんじゃないかって不安になるのよね。
で、彼女から逃れるように大森南朋は池脇千鶴と不倫に走る。
でもねえ、池脇千鶴っていつまでたっても童顔だから、大森南朋とじゃあ、釣り合いが悪くてねえ。
あのキャラでどこまで押し通せるか、女優としての曲がり角だな。
一方の中谷美紀も若い男に走る。
男のほうからアタックしていくんだけど、貫禄が違うから、実は中谷美紀に操られているんじゃないかって気になる。
「人は守りたいもの、あるいは守ろうとするもののために嘘をつくのよ」とか言われてね。
江國香織の原作なだけに、いかにも小説っぽいセリフが満載なんだけど、中谷美紀だから冷たい空気のように漏れてくる。
夫婦の日常生活を描きながら、どこか生活感が希薄で、足が地上から5センチくらい浮き上がっているような印象がある。
これで夫婦は元のサヤに納まれるのかよ、って心配なのは俺だけ?
でも、映画としての口当たりは悪くなかったわよ。
口当たりがいいっていうのは、ウエストの洋菓子のようなもののことを言うんだ。
そんなにおいしいの、ウエストって?
おいしいさ。これだけは嘘じゃない。
あ、他はみんな嘘なんだ。




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