【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「キャッチボール屋」:東大病院前バス停付近の会話

2006-10-27 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

東大病院の前っていいグランドになってるんだな。
東大生って、勉強ばかりして運動なんかしないかと思ったけど、そんなこともないのね。
そりゃ、東大生だって、キャッチボールくらいするだろ。
映画の「キャッチボール屋」はなんだかごちゃごちゃした公園でキャッチボールしてたけど、これくらい広いところで伸び伸びとやりたいわよね。
ま、それが世間てもんだ。あらゆる障害を超えてどこまで愛する人とキャッチボールを続けられるか。
そんなかっこいい映画じゃなかったわよ。成り行きでキャッチボール屋になった男が奇妙な人々と交流ともいえないような交流をするってだけの話。
まあ、愛だの恋だのはなかったな。
ドラマチックなこともほどんどなく。
高校野球のエピソードは泣かせるけど、でも映画自体はことさらそれを強調するわけでもなく。肩の力を抜いてるのな。
そういう映画って、観てる方も肩が抜けて、なんかダラダラ見てるだけで癒されるのよね。
時代にぴったりってやつかな。ちょっと感じは違うけど、「かもめ食堂」系の映画だよな。
俳優たちがみんないいのよね。熱演ていうんじゃなくて自然体で、淡々としてて。
大森南朋も寺島進も松重豊も光石研もみんないい。
光石研なんて、キャッチボールが下手な役なんだけど、下手そうにボールを取るって、かえって難しかったんじゃないのかなあ?
それもまた自然に演じてたよな。
それからあのOL役。あんまり見かけないけど、何て言うのかしら。
キタキマユ。ヘンなヤツ。エンタの神様にでも出ていそうなキャラクター。
この映画のヘンさって、北野武の映画のヘンさにどこかリズムが似てるなあと思ったら、監督の大崎章は北野武の映画の助監督してたんだってね。
北野武ほどの洗練さはなかったけど、そのぶん、素朴でこれはこれでよかったよな。
別に傑作でも秀作でもないし、特筆すべきシーンもないんだけど、どうもけなすのにためらわれる愛すべき映画なのよ。
東大生のように秀才ではないけど、東大の生協のおばさんくらいの愛嬌はあるって感じかな。
例えがよくわからないけど、取材協力東大病院ってタイトルに出てたわね。
痴呆の取材に協力したのかね。
老人の痴呆がすべての発端というのも案外意味深ね。ファンタジーの始まりって感じで。
人はみな、誰もが誰かとキャッチボールをしたがっている・・・。
なるほど。たまにはあなたも頭よさそうなこと言うのね。
たまにじゃない。いつもだ。


ふたりが乗ったのは、都バス<学01系統>
東大構内⇒東大病院前⇒竜岡門⇒上野広小路⇒御徒町⇒上野駅前

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