【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「初恋」:東大構内バス停付近の会話

2006-10-25 | ★学01系統(東大構内~上野駅)

三億円事件の次の年にこの安田講堂が陥落したんだよな。
学生運動華やかなりし頃ね。
壮絶だったもんなあ、占拠学生と機動隊の闘い。
って、あなた、実際に体験したことあるの?
ないけど。
じゃあ、大きな顔して言わないでよ。
おいおい、三億円事件を題材にした「初恋」の監督だって、リアルにあの頃は体験していないはずだ。リアルに体験したことじゃなきゃなにも言えないなんておかしいぜ。たとえば、「ALWAYS 三丁目の夕日」の監督だって、あの映画の時代は知らないはずだ。
そりゃそうね。でも、どちらの時代も知らない私が見ても、「ALWAYS 三丁目の夕日」は、ああ、あんな時代もあったなあ、と思えるのに、「初恋」は、ああ、あんな時代もあったなあ、とどうも思えないのはどうしてかしらね。
そりゃ、タイトル見りゃ一目瞭然だ。この映画が描きたいのは、三億円事件の時代じゃなくて、「初恋」をした女の子の心の揺れなんだ。
たしかに、いまをときめく宮崎あおいは表情豊かでかわいいけど、それだけじゃない。あの時代にいなければいけなかったっていう必然性がどうも感じられないのよね。
そんなことどうでもいいじゃん。かわいけりゃ何でもいい。
そういうもんじゃないでしょ。女子高生が初恋のために三億円事件の犯人になったって話よ。もうちょっと新鮮な感じがしてもいいのに、映画を観ててもあんまりワクワクしないのはどういうわけ?三億円事件と女子高生の初恋なんてミスマッチでおもしろいに決まってるのに。
ああ、テレビドラマの「マイボス・マイヒーロー」なんて、やくざとツルゲーネフの「はつ恋」の組み合わせがミスマッチでおもしろかったのに、三億円事件と女子高生の「初恋」の組み合わせがミスマッチなこの映画にはそういう身を乗り出させるおもしろさが欠けているのは、たしかだな。
もっと元気でもよかったのかもね。
ああいう時代はそんな元気なやつはおらんだろう、という先入観があったのかもしれないが、なんか、映画全体がしんねりむっつりしてるんだよな。
そんな部分で時代を表現しないで別の時代表現があったのかもね。周囲の学生たちなんて、誰もキャラクター立ってなかったし。
それなのに、最後に「アメリカン・グラフィティ」みたいに、その後の彼らの人生を語られたって感動もなにもないよな。
あの「アメリカン・グラフィティ」方式は、ちゃんと本編の中で思い入れのできるキャラクターにしておかないと全然機能しないなんて、素人にもわかるのにね。
やっぱり、宮崎あおいの表情を見る映画なんだよ。頭をなでられたときのうれしそうな顔を見れただけで俺は満足だ。
レベルが低いなあ。そんなレベルだから東大落ちたのよ。
え、なんの話だ?
あ、ごめん。他の人と勘違いした。
誰と?
私の初恋の人・・・。
うそ!


ふたりが乗ったのは、都バス<学01系統>
東大構内⇒東大病院前⇒竜岡門⇒上野広小路⇒御徒町⇒上野駅前

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