【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

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「ワールド・トレード・センター」:築地バス停付近の会話

2006-10-07 | ★都05系統(晴海埠頭~東京駅)

このビルは?
時事通信社。
じゃあ、9.11のときは大変だったでしょうね。事件を伝えなくちゃいけなくて。
あの日、ワールド・トレード・センターの外で何が起こったかは、テレビや新聞や通信社の報道で知ったけれど、そのとき内部で何が起きていたかまではやはりなかなか伝わって来なかったな。
そこを伝えてくれるのが映画の「ワールド・トレード・センター」よね。ビルの人々を助けに行った警察官が瓦礫にはさまれ身動きとれなくなるという実話を基にした感動的な救出劇。
そう、救出劇なんだよな・・・。
なにか、不満でもあるの?
9.11の映画化だっていうから、9.11についての映画かと思ったら、家族の絆と救出を描いただけの映画なんだ。
9.11っていったって、いろんな側面があるんだから、家族の絆と救出に限ったっていいじゃない。あなた、いま、言ったばかりじゃない、テレビや新聞や通信社の報道では、そのとき内部で何が起きていたかまではやはりなかなか伝わって来なかったって。それを私たちに見せてくれたっていうだけでもこの映画の価値はあるんじゃないの?
だけど、このような家族の絆や救出のドラマって、たとえば日本の阪神・淡路大震災のときにもきっとあっただろうし、JR西日本の電車事故のときだってきっとあっただろうし、9.11に限らないと思うんだ。
そうよ。9.11を描きながら実は不慮の事故や災害にあったときの普遍的な家族愛や人類愛にまでも視野を広げたとても奥の深い映画なのよ。
でも、あれは、事故や災害じゃない。テロだ。
もちろんそうだけど、いろいろな側面からの描き方があってもいいじゃない。この映画はあの事件を家族愛と救出劇にしぼったところが見所なのよ。政治的な背景は自覚的に切り捨てたところに良さがあるんじゃないの。
だったら、あの、最後の字幕はなんだよ。
最後の字幕?
ああ。瓦礫の下敷きになった警察官を助けた海兵隊員がその後どうなったかを示す字幕。
あれがなにか?
海兵隊員は映画の終盤でこういうセリフを言う。「これから兵士がもっと必要になる」。もちろん、映画の中では、瓦礫に埋まった人たちを助けるために必要だっていう意味なんだけど、実際にはその後、報復のため戦場にかり出されるために兵士がもっと必要になっている。
だから?
俺には、それを肯定する字幕に思えるんだ。この映画の中で自信たっぷりに行動した英雄がその後、ああなりましたって字幕で宣言するってことは、9.11以降にアメリカの取った行動を肯定するってことだぜ。その結果、世界はいまや泥沼だ。そういう政治的な意味の字幕を最後に持ってきた以上、この映画はやはり9.11の映画なんだよ。政治的な背景なんて切り捨てていないんだよ。
でも、雑誌のインタビューでは、オリバー・ストーンはその後のアメリカの行動を必ずしも肯定していないわよ。
だったら、あんな字幕をあんなノウテンキに出すなよ。出すからにはどういう意図で出したのかはっきりさせろよ。
自分で考えなさい、ってことじゃないの?
そりゃひきょうだろ。映画の中では徹底して目をつぶってきた政治的な部分を最後の最後で出してきて自分で考えろなんて。少なくとも、同じ題材の「ユナイテッド93」はそこまでノウテンキじゃなかったよ。ちゃんと犯人側もきっちり描くことで、世界の有りようを考えようと言う意志が見えたよ。
ああ、犯人側も出せばよかった、と。
そんな話じゃない。アメリカと世界の関係をもっと真剣に考えろってことだよ。
でも、オリバー・ストーンにアメリカと世界の関係を求めようなんてそもそも無理があるんじゃないの?
たしかに、「プラトーン」でベトナム戦争をアメリカ青年の通過儀礼にしちゃったくらいだからな。世界を俯瞰して見るなんて期待はしていないけど、だったらあんな字幕出すなよ。
観てない人には何の話かわからないと思うけど。
いいんだ、肝心なところは自分の目で確かめろ、っていうのが俺の主義だ。
いつからそんなジャーナリストみたいな主義になったの?
いまからだ。一応、通信社の前だからな。


ふたりが乗ったのは、都バス<都05系統>
晴海埠頭⇒ほっとプラザはるみ入口⇒ホテルマリナーズコート東京前⇒晴海三丁目⇒勝どき駅前⇒勝どき橋南詰⇒築地六丁目⇒築地三丁目⇒築地⇒銀座四丁目⇒有楽町駅前⇒東京国際フォーラム前⇒東京駅丸の内南口

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