【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「西瓜」:築地六丁目バス停付近の会話

2006-10-02 | ★都05系統(晴海埠頭~東京駅)

築地の場外市場って、魚だけを売ってるわけじゃないのね。
ああ、野菜だって果物だって何だってある。
さすがにこの時期、西瓜はないようだけどね。
スイカジュースもないけどな。
小さい頃から、オレンジジュースとかリンゴジュースとかはあるのにどうしてスイカジュースはないんだろうって思ってたら、台湾映画の中に出てきたんでびっくりしたわ。
「西瓜」ってタイトルの映画だから甘い恋愛映画か何かだと思ったら、とんでもない映画でびっくりした。正直、カップルで見るには毒々しすぎるな。
ほんと、あんな形でスイカが出てくるとは思わなかったわ。
ああいうのもクリエーティブな表現て呼ぶのかな。
ストーリーは台湾の男女のちょっと暗めの恋愛なのに、途中でいきなりノウテンキなミュージカルシーンがはさまってきて、あっけにとられるし。
ノウテンキでチープなミュージカルシーン。まるで鈴木清順の「オペレッタ狸御殿」みたいだったな。
それが、ストーリーを邪魔するように入ってくるから、なに、これ?と思ったけど、逆にあれがなかったら息苦しくて最後まで見ていられなかったかもね。
そうそう。恋愛部分のほうはやたら重苦しくて、しかも接写が多いから肌や汗の匂いまで漂ってくるようで、息抜きのシーンがなかったら途中で席を立ってた。
どうしてこんな相反する二つの映画表現をひとつにするような手法を採るのかと思ったけど、最後まで見てようやく理由がわかったわ。この映画のテーマは「合体」なのよね。
合体?
文字通り、異なるものの合体がテーマ。男と女のふれあいなんて生易しいものじゃなく、男と女という異なるものの合体がテーマなのよ。それを映画全体で象徴するのが異なる手法の合体。
そういえば、台湾映画なのに日本人が出てたな。あれも合体?
合体してたじゃない。
正直、ああいう役を日本人がやるのかと思うとちょっと気持ちが引いたけどな。
最後の合体なんて、ああいう展開になるとは想像もしてなかったわ。あまりに人間臭くて、ほとんど喜劇に昇華してたもんね。
人生は悲しくておかしい、というある意味、名シーンだった。今は無き神代辰巳の映画かと錯覚するほどだったよ。
人と人の合体は、真正面から描くとこんなにも悲しくておかしいっていう・・・。
まあ、ただの口当たりのいい恋愛映画では終わらせないっていう強固な意志は感じるよ。スイカをスイカジュースにして飲むような映画ってことだな。
おいしいかどうかはわからないけど、珍しいとはいえるわ。
築地の魚市場に八百屋があるのも、異なるものの合体ってことかな。
こっちの合体はおいしそうだけどね。


ふたりが乗ったのは、都バス<都05系統>
晴海埠頭⇒ほっとプラザはるみ入口⇒ホテルマリナーズコート東京前⇒晴海三丁目⇒勝どき駅前⇒勝どき橋南詰⇒築地六丁目⇒築地三丁目⇒築地⇒銀座四丁目⇒有楽町駅前⇒東京国際フォーラム前⇒東京駅丸の内南口

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