Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

オラリー・エルツ/読響

2019年04月18日 | 音楽
 オラリー・エルツ(1971‐)の指揮を聴くのは2009年5月の読響定期以来なので、10年ぶりだ。そのときはラフマニノフの「交響的舞曲」その他を聴いた。音楽の運びに強引なところがあり、あまりよい印象が残っていないが、さて、今回はどうか。

 1曲目はエルツと同じエストニアの作曲家エリッキ=スヴェン・トゥール(1959‐)の新作「幻影Phantasma」。トゥールの作品は、やはりエストニア出身のパーヴォ・ヤルヴィがN響で積極的に紹介しているので、大分馴染みになった。今回の作品も、細かいリズムの動きと音の鮮度のよさが、いかにもトゥールらしい。

 作曲者自身のプログラム・ノートによれば、ベートーヴェンの「コリオラン」からのモチーフが「亡霊のように忍びやかに現れ、現れたときと同じように密やかに消えていく」そうだが、「そのモチーフは〈コリオラン〉のメロディーなどではなく、作品そのものの主構造を基にしている」。わたしにはその点はよくわからなかった。

 2曲目はストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏はノルウェー出身のヴィルデ・フラング(1986‐)。この奏者を聴くのは初めてだが、たいへんな才能だ。自動車に例えれば、どんなにスピードを出しても、安定走行が揺るがない高級車といった感じの奏者。

 それともう一つ特徴的なことは音だ。最近のスター・ヴァイオリン奏者のような、強く張った(どんなときでもオーケストラに埋もれずに、はっきり聴こえる)大きな音とは違って、丸みのある、小さめな音。その音がオーケストラのテクスチュアの中に(縦糸、横糸のように)織り込まれる。よく聴けば、くっきりと聴こえるのだが(そして楽器もよく鳴っているのだが)、放っておいても聴こえるタイプの音ではない。

 アンコールにハイドンの「皇帝」のメロディーをヴァイオリン独奏用に編曲したものが演奏された。とてもモダンな感じがしたが、帰りがけに掲示を見たら、クライスラー編曲だったので、意外だった。

 3曲目は武満徹の「星・島(スター・アイル)」。わたしは(当夜の曲の中では)この曲の演奏がもっとも気に入った。ノスタルジックな音色が舞台いっぱいに広がった。

 4曲目はシベリウスの交響曲第5番。読響の高度なアンサンブルが活かされて、精緻な演奏が繰り広げられたが、エルツの指揮には(比喩的にいえば)雑味のない日本酒のようなところがあり、わたしは次第に飽きてきた。
(2019.4.17.サントリーホール)

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