Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

武満徹オーケストラ・コンサート

2016年10月14日 | 音楽
 武満徹(1930‐1996)の没後20年記念演奏会。オリヴァー・ナッセン指揮の東京フィルの演奏で5曲。その選曲が面白い。1960年代の作品が4曲と最晩年の作品が1曲。1970年代後半から1980年代にかけての‘武満トーン’の作品は素通りだ。ナッセンの選曲かと思うが、今の日本の武満受容に一石を投じた格好だ。

 1曲目は「地平線のドーリア」(1966)。終始弱音でそっと囁くように演奏された。ソットヴォーチェの演奏。何年か前に聴いた演奏もそうだった。でも、この曲はそういう曲だろうか。弱音はよいのだが、その弱音はもっと緊張してはいなかったろうか。

 2曲目は「環礁」(1962)。ソプラノ独唱はクレア・ブース。声も技術もよいが、国籍不明の日本語にはまいった。大岡信のシュールな詩句が台無しだ。唐突に他の歌手の名前を出して恐縮だが、たとえば半田美和子のような歌手だったら、もっと効果的に歌えたのではないだろうか。

 もっともオーケストラは美しかった。全5部の中の第3部(この曲の中心部)は図形楽譜で書かれているが、当日は「イギリスの作曲家ジュリアン・アンダーソン(1967‐)による解釈」で演奏された。図形楽譜の演奏は、今後、○○版、△△版という形態も出てくるのだろうか。

 3曲目は「テクスチュアズ」(1964)。ピアノ独奏は高橋悠治。演奏は気合が入っていたが、正直なところ、曲がいかにも短い(もっと展開してほしい)と思った。この曲は大曲「弧(アーク)」の一部となったので、今後なにかの機会にその全体を聴いてみたいものだ。

 4曲目は「グリーン」(1967)。色彩豊かで生気に満ちた演奏。多少大袈裟になるが、この曲の再評価を迫る演奏のように感じた。ナッセンは10代の頃、この曲に惹かれたそうだ。わたしはナッセンとは一つ違いの同世代。わたしは「地平線のドーリア」に惹かれた。ともに青春時代の思い出だ。

 5曲目は最晩年の「夢の引用―Say sea, take me!―」(1991)。2台のピアノはジュリア・スーと高橋悠治。ピアノの音が美しかった。水滴が滴り落ちるような音。オーケストラも的確にこの曲を捉えていた。大胆な引用の音楽。ショスタコーヴィチの交響曲第15番やB.A.ツィンマーマンの「ユビュ王の晩餐の音楽」を思い出す。引用の仕方は三者三様だ。
(2016.10.13.東京オペラシティ)

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