Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルラン/読響

2016年10月15日 | 音楽
 ベルリオーズのオーケストラ伴奏付き歌曲集「夏の夜」がプログラムに組まれたので、カンブルラン/読響の演奏会へ。

 プログラム構成が興味深い。前半と後半のそれぞれ冒頭にシューベルトの「ロザムンデ」の音楽を配し、前半のメインがベルリオーズの「夏の夜」、後半のメインがベートーヴェンの交響曲第8番。いかにもカンブルランらしい知的な遊びのあるプログラムだ。

 前半は「ロザムンデ」の序曲から。木管が色彩豊かに鳴り、弦も澄んでいる。オーケストラ全体が明るく暖かみのある音色で鳴っている。リズムに締まりがある。ゆるいシューベルトではなく、快いリズムで進むシューベルト。

 次にベルリオーズの「夏の夜」。メゾ・ソプラノ独唱はカレン・カーギル。イギリス・スコットランド生まれの歌手だそうだ。1曲目の「ヴィラネル」が始まる。声の豊かさと安定感、そしてフランス語の美しさに惹き込まれる。オーケストラも繊細だ。しかも歌にぴったり付けている。カンブルランのうまさに感心する。

 2曲目の「ばらの精」は、歌、オーケストラともに繊細そのもの。3曲目の「入江のほとり」ではカーギルの暗い低音に注目し、4曲目の「君なくて」の冒頭のフレーズ「帰っておいで、帰っておいで」では一転して明るく、空気の中に溶け込むような高音に魅了された。

 5曲目の「墓地で」は、一見とりとめのない曲想だが、じつはニュアンスに変化があり、また(わたしが今まで気付いていなかった)微妙な音が鳴っていることを知った。6曲目の「未知の島」では、この歌曲集を締めくくるに相応しく、波が打ち寄せるような起伏のある演奏に、心地よく身を任せた。

 事前の期待値を上回る演奏だった。オーケストラ伴奏付き歌曲の見事な演奏例だと思った。8月から9月にかけて、リヒャルト・シュトラウスの「四つの最後の歌」を2度聴いて、オーケストラ伴奏付き歌曲とは難しいものだと思ったが、その模範的な演奏例に出会った気がした。

 プログラムの後半では、まず「ロザムンデ」の間奏曲第3番とバレエ音楽第2番が演奏されて、「夏の夜」で火照ったわたしの心をクールダウンしてくれた。

 最後はベートーヴェンの交響曲第8番。明るい音色できびきび進む演奏。カンブルランらしい演奏だ。サプライズはとくになかった。なお細かいところで微かな綻びがあった。
(2016.10.14.サントリーホール)

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