Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

少年口伝隊一九四五

2013年08月02日 | 演劇
 新国立劇場演劇研修所の公演「少年口伝隊一九四五」。毎年この時期にやっていて(去年はなかったそうだが)、いつも観たいと思うのだが、行けずじまいだった。今年はぜひ観たいと思って、日程を空けておいた。

 写真で舞台の様子は見ていた。舞台の前面に昔の学校の教室にあったような木の椅子が並べられている。出演者は12人。なので、椅子も12脚。白いシャツと黒いズボンの男子生徒6人と、白いシャツと黒いスカートの女子生徒6人が座る。これらの生徒たちが朗読する劇(朗読劇)が本作だ。

 原爆投下直前の平穏な広島市内から始まって、原爆投下とその後の阿鼻叫喚。生き残った少年3人は少年口伝隊(新聞の発行ができなくなった新聞社に雇われて口頭で情報を伝える仕事)として市内を回る。そこに襲ってくる大型台風(枕崎台風)。

 これらの話がテンポよく進む。朗読劇だが、一人が朗読するのではなく、12人が代わる代わる朗読する。そのテンポが心地よい。ときには一斉に言葉を発し、あるときは一瞬の沈黙がある。またあるときは台本を見ずに(朗読劇なので、台本を見ながら朗読するのが基本だが、台本を閉じて、演技をしながら)台詞を発する。

 演出は栗山民也。その指導のもとで十分に準備された舞台だと思う。12人それぞれの個性があり、――わたしにはわからないが――才能のちがいもあるだろう。ともかく今は研修所で研鑽をつんでいる若い人たちの真摯な舞台だ。

 舞台後方には一人のギター奏者がいる。この奏者が奏でるノスタルジックなメロディーと効果音的な単音が、この舞台にモノクロームな色彩を添えていた。ギター奏者は宮下祥子。繊細な演奏だった。2002年のアンドレアス・セゴビア国際コンクールで2位入賞。セゴビアの名を冠したコンクールなので、権威があるのだろう。

 本作は、井上ひさしが2008年に演劇研修所のために書き下ろした作品。今回、公演の直前に本になった。さっそく読んでみた。絵本のような感じだ。ヒラノトシユキ氏の絵が要所要所にある。どの絵も味がある。情景を端的に表している。久しぶりに絵本を読む気分を楽しんだ。

 読んで感動した。でも、舞台を観たら、もっと感動した。声の力とはすごいものだ。目の前で演じている役者の身体の力とはすごいものだ。そして言葉のニュアンス、間合い等々を読みとる演出家の力もすごいものだ。
(2013.8.1.新国立劇場小劇場)

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