Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

広上淳一/都響

2013年08月01日 | 音楽
 ダンス・ダンス・ダンスと名付けられたコンサート。広上淳一指揮の都響。東京文化会館の「響の森」シリーズの一環だ。

 1曲目はバルトークの「ルーマニア民俗舞曲」。まあ、どうってことのない演奏――そういったら失礼になるだろうが、都響なら本番前に1~2回合わせればできしまう演奏――だと思った。といっても、別に文句をいっているわけではない。そう思ったということ。

 2曲目はラロの「スペイン交響曲」。ヴァイオリン独奏は竹澤恭子。先日の東京シティ・フィル定期に続き、短期間のうちにまた聴けるとは嬉しい。東京シティ・フィルのときには――オーケストラの定期に相応しく――ベルクのヴァイオリン協奏曲だったが、今回はサマーコンサートに相応しく「スペイン交響曲」。

 演奏はすばらしく、最初から最後まで惹きつけられた。滑らかな語り口、豊かに鳴る音――ほんとうはそんな一般的な表現ではなく、肉体的な音とでもいいたいくらいだ――そして指揮者との丁々発止の掛け合い。とくに第3楽章の彫りの深さがユニークだった。昔はよく省略された第3楽章だが、こんなに面白かったのかと認識を新たにした。

 3曲目はブラームスのハンガリー舞曲集(全21曲)。原曲のピアノ4手、またはヴァイオリンとピアノ用の編曲ならともかく、管弦楽版で全曲通して聴く機会はめったにない。はたしてどう聴こえるか、ありていにいえば、どの程度まで退屈せずに聴き通せるか、それが興味の的だった。

 ところがどの曲も面白かった。はっきりいって、ブラームスとしても気乗りしていないような、あるいは、なかだるみしているような曲も、ないではないのだが、それらを含めて、どの曲もキャラクターピースのように面白く聴けた。

 これは演奏がよかったからだ。都響の演奏力はいうまでもないが、広上淳一の各曲の描き分けの巧みさもあった。各曲の性格を的確にとらえた演奏。しかもこの指揮者らしく、音楽の枠を超えることはない――特徴を強調することはあっても、けっして音楽の枠を逸脱しない――演奏。意外に実直な演奏。

 こうして全21曲を聴き通した。終演は21:15。ヘビーなプログラムだった。ほんとうはこれを野外コンサートで聴けたら――ベルリン・フィルのヴァルトビューネのコンサートのように――、もっとよかったかもしれない。そういう日は――この東京にも――訪れるのだろうか。
(2013.7.31.東京文化会館)

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