Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ロベルト・フックス

2009年02月16日 | 音楽
 土曜日に奈良で職場の友人たちの集まりがあったので、前日の夕方に大阪に入り、大阪シンフォニカー交響楽団の定期をきいてきた。指揮は正指揮者の寺岡清高さんで、プログラムは次のとおり。
(1)ベートーヴェン:交響曲第4番
(2)ロベルト・フックス:交響曲第3番(日本初演)
 この指揮者とオーケストラのコンビが続けている「ベートーヴェンと世紀末ウィーンの知られざる交響曲」シリーズの第2回にあたる。

 フックスってだれ?というのが大方の反応ではないだろうか。少なくとも私はそうだった。手元の音楽事典をみてみたら載っていた。念のためにWikipediaもみてみたが、こちらにも載っていた。要約すると、ブラームスの後の世代のオーストリアの作曲家で、長らくウィーン音楽院の教授をつとめていたとのこと。そして弟子の名前をみて驚く。マーラー、ヴォルフ、ツェムリンスキー、シュレーカーなど。毛色の変わったところでは、シベリウスの名前も並んでいる。

 その交響曲第3番が演奏された。日本初演だそうで、私は初めてきく。第1楽章はソナタ形式で、第1主題は清新なロマンの香りがただよい、第2主題はメンデルスゾーンの妖精の音楽を思わせる軽快な動き。第2楽章は変奏曲形式の緩徐楽章。後半部分では深い陰影がさす。第3楽章はスケルツォ。トリオの部分の流れるような歌が印象的。第4楽章はソナタ形式で、展開部では対位法的な動きが顔をみせ、最後は輝かしいコーダになる。
 全体としては堂々たる構成で、オーケストラもよく鳴るが、几帳面すぎて、やや型にはまった感がなくもない。
 この曲をきく意味は乏しかったか。いや、けっしてそうではない。私は、ききながら、なんというか、歴史の厚みを感じた。シューマンがいて、メンデルスゾーンがいて、ブラームスがいて・・・というのは歴史の上澄みであって、その下には厚い堆積がある。その堆積には人間の営みが詰まっていて、そこに触れたように感じた。

 演奏の順序とは逆になったが、ベートーヴェンでは、第1楽章の序奏が緊張感をもって進行し、その後、決然とした調子で主部に突入したが、残念ながら弦楽器の奏者のずれが目立った。第2楽章と第3楽章は表面をなでただけで終わり、第4楽章に入って勢いを取り戻したが、それまでの失点が大きすぎた。

 それでも、演奏会が終わって外に出た私は、満ち足りた思いだった。この夜、大阪は、東京などと同じように、春一番が吹いていたが、暖かい風はそのときの私の気持ちにふさわしかった。
(2009.02.13.ザ・シンフォニーホール)

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