お盆休み中の金曜日(夜間開館日)に訪れた「ルーヴル美術館展~地中海四千年のものがたり~」。会場に着いたのは午後6時半。意外に混雑していた。日本人にはなじみの薄い地味な企画かと思っていたが、認識が甘かった。それでも午後8時頃になると潮が引くように空いてきた。午後9時まで開館なので、ゆっくり観ることができた。
実に力の入った展覧会だ。地中海世界という言葉をキーワードに、地中海沿岸の諸民族・諸国家の四千年にわたる対立と交流をたどった展示だ。ルーヴル美術館の総力をあげた企画という触れ込みをどこかで聞いた記憶があるが、たしかにその実感があった。
地中海世界、同展では紀元前2000年紀から19世紀の終わり(1850年)までをたどっているが、なかでもその出発点の紀元前2000年紀からローマ帝国の支配(紀元後3世紀頃)までの地中海世界の混沌とした歴史が面白かった。
なぜ面白かったかというと、こういう混沌とした状況から今のヨーロッパは生まれてきたのだ、ということがよくわかったからだ。いいかえるなら、地中海を真ん中に据えた鳥瞰図的な視点にたつことによって、ヨーロッパがどう生まれてきたかを理解することができる、ということがわかったからだ。
そこがつかめると、たとえば、時代はくだるが、オスマン帝国のウィーン包囲(1529年および1683年)も、ナポレオンのエジプト遠征(1798年)も、地中海世界の出来事という側面をもっていることが、感覚的にわかってきた。
そしてまた、現代社会の緊張の構図――キリスト教世界とイスラム教世界の緊張関係――も、それがどこから生まれてきたのか、わかる気がした。そのもっともシンプルな原形が見える気がした。
総論的なことは以上にして、あとは展示品について。以上のような視点で本展を観たせいか、一番心を惹かれたのは、ローマ皇帝アウグストゥス(在位前27‐後14年)、同ハドリアヌス(在位117‐138年)、同セウェルス(在位193‐211年)の各胸像だ。そこに漲る力の充溢は、ローマ時代の最盛期という時代の力を感じさせた。しかもまた、そこには三者三様の個性のちがいが感じられ、一面的ではない深みもあった。
チラシ↑に使われているアルテミス像(ギャビーのディアナ)は意外に小さく、最初は少女のように感じられた。本作では衣裳の襞の彫りの深い表現に惹かれた。
(2013.8.16.東京都美術館)
実に力の入った展覧会だ。地中海世界という言葉をキーワードに、地中海沿岸の諸民族・諸国家の四千年にわたる対立と交流をたどった展示だ。ルーヴル美術館の総力をあげた企画という触れ込みをどこかで聞いた記憶があるが、たしかにその実感があった。
地中海世界、同展では紀元前2000年紀から19世紀の終わり(1850年)までをたどっているが、なかでもその出発点の紀元前2000年紀からローマ帝国の支配(紀元後3世紀頃)までの地中海世界の混沌とした歴史が面白かった。
なぜ面白かったかというと、こういう混沌とした状況から今のヨーロッパは生まれてきたのだ、ということがよくわかったからだ。いいかえるなら、地中海を真ん中に据えた鳥瞰図的な視点にたつことによって、ヨーロッパがどう生まれてきたかを理解することができる、ということがわかったからだ。
そこがつかめると、たとえば、時代はくだるが、オスマン帝国のウィーン包囲(1529年および1683年)も、ナポレオンのエジプト遠征(1798年)も、地中海世界の出来事という側面をもっていることが、感覚的にわかってきた。
そしてまた、現代社会の緊張の構図――キリスト教世界とイスラム教世界の緊張関係――も、それがどこから生まれてきたのか、わかる気がした。そのもっともシンプルな原形が見える気がした。
総論的なことは以上にして、あとは展示品について。以上のような視点で本展を観たせいか、一番心を惹かれたのは、ローマ皇帝アウグストゥス(在位前27‐後14年)、同ハドリアヌス(在位117‐138年)、同セウェルス(在位193‐211年)の各胸像だ。そこに漲る力の充溢は、ローマ時代の最盛期という時代の力を感じさせた。しかもまた、そこには三者三様の個性のちがいが感じられ、一面的ではない深みもあった。
チラシ↑に使われているアルテミス像(ギャビーのディアナ)は意外に小さく、最初は少女のように感じられた。本作では衣裳の襞の彫りの深い表現に惹かれた。
(2013.8.16.東京都美術館)