Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

サントリーホール作曲家の個展Ⅱ:細川俊夫&望月京

2019年11月29日 | 音楽
 今年の「作曲家の個展Ⅱ」は細川俊夫と望月京(もちづき・みさと)。人気作曲家同士の組み合わせだ。サントリー芸術財団50周年記念と銘打った演奏会。細川俊夫と望月京の新作を聴くチャンスだ。

 まずはそれぞれの旧作から。1曲目は望月京のオーケストラ作品「むすび」(2010)。東京フィルの創立100周年記念の委嘱作品。上品な色彩感が望月京らしいが、作曲にあたって寿ぎの歌が念頭にあったという、その寿ぎのイメージから出発している点が、わたしには物足りなくもあった。演奏は杉山洋一指揮の都響。丁寧で誠実で、神経の行き届いた演奏だった。それは2曲目以降も同様だ。

 2曲目は細川俊夫のオルガンとオーケストラのための作品「抱擁―光と影―」(2016‐17)。オルガン独奏はクリスチャン・シュミット。作曲者自身がプログラム・ノートで「オルガン協奏曲」と書いているが、オルガンとオーケストラが掛け合うというよりも、一体となって一つの世界を創出する曲だ。

 細川俊夫の最新作の一つだが、それを聴いていると、最近は細川俊夫の雄弁さに磨きがかかっていることを感じる。凄みの効いたチェロとコントラバスの唸り、濃厚な情緒など、オペラの一場面を彷彿とさせる部分が散見される。

 3曲目は望月京の新作、打楽器とオーケストラのための「オルド・アプ・カオ」Ordo ab Chao。打楽器独奏はイサオ・ナカムラ。わたしは2010年5月に大野和士指揮の都響でこの打楽器奏者を聴いたことがあるが、そのときの曲は細川俊夫の打楽器協奏曲「旅人」だった。今でも記憶に残っている。

 今回もこの打楽器奏者でなければできない鮮烈かつ強烈で、個性的でかつインパクトのあるパフォーマンスと、望月京の鮮明で曇りのない、かつ残酷で容赦のない音楽とが相俟って、わたしには忘れられない体験となった。オーケストラの打楽器奏者たちも加わったカデンツァは、紛争地の戦闘の現場を見るようで、その後の静寂は、すべてが破壊しつくされ、荒涼とした地平線に訪れる一瞬の平穏のように思われた。

 4曲目は細川俊夫の新作、オーケストラのための「渦」。興味深かったのは、この曲でも望月作品と同様に打楽器奏者たちの独奏部分があること。ただ望月作品では打楽器奏者個々のキャラが立っていたのに対して、細川作品ではアンサンブルとしてまとめられていた。また望月作品では音がカラフルで明瞭だったのに対して、細川作品ではモノトーンでグレーゾーンを内包していた。二人の作風のくっきりしたコントラストが意外だった。
(2019.11.28.サントリーホール)

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