Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

尾高忠明&日本フィル

2010年10月24日 | 音楽
 尾高忠明さんは数年おきに日本フィルを振っている。今回は次のような意欲的なプログラムだった。
(1)オネゲル:交響詩「夏の牧歌」
(2)ラヴェル:バレエ組曲「マ・メール・ロワ」
(3)ウォルトン:オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」(バリトン:三原剛、合唱:晋友会合唱団)

 オネゲルの「夏の牧歌」は弦5部にフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットそしてホルンが各1本入る編成。冒頭の弦の伴奏が繊細、かつリズムがきちんと浮き出る演奏で、思わず耳をそばだてた。ホルンと木管も神経の行き届いた演奏。

 この曲はスイスのヴェンゲンで作曲されたそうだ。ヴェンゲンといえば、インターラーケンからラウターブルンネン経由でユングフラウ・ヨッホに行く登山電車の途中にある小さな村だ。アルプスのさわやかな空気が感じられる曲。

 ラヴェルの「マ・メール・ロワ」は組曲版。まずピアノ連弾版ができて、それをオーケストレイションした版だ。ラヴェルはこれでは終わらずに、さらに曲順を入れ替え、新たな曲を書き加えてバレエ音楽とした。よくあるパターンの、まずバレエ音楽ができて、そこから何曲かを抜粋して組曲を作るというのとは逆パターンで珍しい。

 演奏は「夏の牧歌」と同じ路線を行くもの。丁寧な音づくりだが、こちらのほうは表現がやや消極的だった。

 ウォルトンの「ベルシャザールの饗宴」は大編成のオーケストラに独唱バリトン、合唱そして2組のバンダを要するので、めったに演奏されない。私も生できくのは2度目だ。初めてきいたのは、若き日の沼尻竜典さんが新星日響(当時。今は東京フィルに合併されている)を振った演奏だった。才能ある若い指揮者の指揮姿を記憶している。

 オラトリオだけあって、主役は合唱だ。その点、晋友会合唱団には粗さを感じた。オーケストラも同様。私の期待は十分には応えられなかった。

 でも、生できくこの曲は、やっぱり面白かった。なかでもジャズのイディオムを取り入れた「金の神を賛美せよ! 銀の神を賛美せよ! 鉄の神を賛美せよ!(以下略)」の部分では、オペラ「軍人たち」の作曲者B.A.ツィンマーマンなら、電気ギターを入れたかもしれないと想像した――もちろんウォルトンのこの曲のころにはまだなかったけれど――。

 私には大歓迎のプログラムだったが、お客さんの入りはよくなかった。私が経営陣だったら真っ青だろう。
(2010.10.22.サントリーホール)

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2 コメント

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Unknown (わらちゃん)
2010-11-15 23:36:32
はじめまして。Enoさんのブログは初めて拝見しました。わかりやすい言葉がとてもよいです。私も通っている日フィル東京定期の最近の記事を拝見しました。同じ意見あり違う感想あり、でひとつの音楽がこんなに多様に伝わるのか、と改めて感じました。また訪問させていただきます。
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わらちゃん様 (Eno)
2010-11-16 06:36:04
ありがとうございます。我ながら真面目一本で面白みのないブログだと情けなくなりますが、これ以外に書きようがありません。ご意見ご感想などいただけると嬉しいです。
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