尾高忠明さんは数年おきに日本フィルを振っている。今回は次のような意欲的なプログラムだった。
(1)オネゲル:交響詩「夏の牧歌」
(2)ラヴェル:バレエ組曲「マ・メール・ロワ」
(3)ウォルトン:オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」(バリトン:三原剛、合唱:晋友会合唱団)
オネゲルの「夏の牧歌」は弦5部にフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットそしてホルンが各1本入る編成。冒頭の弦の伴奏が繊細、かつリズムがきちんと浮き出る演奏で、思わず耳をそばだてた。ホルンと木管も神経の行き届いた演奏。
この曲はスイスのヴェンゲンで作曲されたそうだ。ヴェンゲンといえば、インターラーケンからラウターブルンネン経由でユングフラウ・ヨッホに行く登山電車の途中にある小さな村だ。アルプスのさわやかな空気が感じられる曲。
ラヴェルの「マ・メール・ロワ」は組曲版。まずピアノ連弾版ができて、それをオーケストレイションした版だ。ラヴェルはこれでは終わらずに、さらに曲順を入れ替え、新たな曲を書き加えてバレエ音楽とした。よくあるパターンの、まずバレエ音楽ができて、そこから何曲かを抜粋して組曲を作るというのとは逆パターンで珍しい。
演奏は「夏の牧歌」と同じ路線を行くもの。丁寧な音づくりだが、こちらのほうは表現がやや消極的だった。
ウォルトンの「ベルシャザールの饗宴」は大編成のオーケストラに独唱バリトン、合唱そして2組のバンダを要するので、めったに演奏されない。私も生できくのは2度目だ。初めてきいたのは、若き日の沼尻竜典さんが新星日響(当時。今は東京フィルに合併されている)を振った演奏だった。才能ある若い指揮者の指揮姿を記憶している。
オラトリオだけあって、主役は合唱だ。その点、晋友会合唱団には粗さを感じた。オーケストラも同様。私の期待は十分には応えられなかった。
でも、生できくこの曲は、やっぱり面白かった。なかでもジャズのイディオムを取り入れた「金の神を賛美せよ! 銀の神を賛美せよ! 鉄の神を賛美せよ!(以下略)」の部分では、オペラ「軍人たち」の作曲者B.A.ツィンマーマンなら、電気ギターを入れたかもしれないと想像した――もちろんウォルトンのこの曲のころにはまだなかったけれど――。
私には大歓迎のプログラムだったが、お客さんの入りはよくなかった。私が経営陣だったら真っ青だろう。
(2010.10.22.サントリーホール)
(1)オネゲル:交響詩「夏の牧歌」
(2)ラヴェル:バレエ組曲「マ・メール・ロワ」
(3)ウォルトン:オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」(バリトン:三原剛、合唱:晋友会合唱団)
オネゲルの「夏の牧歌」は弦5部にフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットそしてホルンが各1本入る編成。冒頭の弦の伴奏が繊細、かつリズムがきちんと浮き出る演奏で、思わず耳をそばだてた。ホルンと木管も神経の行き届いた演奏。
この曲はスイスのヴェンゲンで作曲されたそうだ。ヴェンゲンといえば、インターラーケンからラウターブルンネン経由でユングフラウ・ヨッホに行く登山電車の途中にある小さな村だ。アルプスのさわやかな空気が感じられる曲。
ラヴェルの「マ・メール・ロワ」は組曲版。まずピアノ連弾版ができて、それをオーケストレイションした版だ。ラヴェルはこれでは終わらずに、さらに曲順を入れ替え、新たな曲を書き加えてバレエ音楽とした。よくあるパターンの、まずバレエ音楽ができて、そこから何曲かを抜粋して組曲を作るというのとは逆パターンで珍しい。
演奏は「夏の牧歌」と同じ路線を行くもの。丁寧な音づくりだが、こちらのほうは表現がやや消極的だった。
ウォルトンの「ベルシャザールの饗宴」は大編成のオーケストラに独唱バリトン、合唱そして2組のバンダを要するので、めったに演奏されない。私も生できくのは2度目だ。初めてきいたのは、若き日の沼尻竜典さんが新星日響(当時。今は東京フィルに合併されている)を振った演奏だった。才能ある若い指揮者の指揮姿を記憶している。
オラトリオだけあって、主役は合唱だ。その点、晋友会合唱団には粗さを感じた。オーケストラも同様。私の期待は十分には応えられなかった。
でも、生できくこの曲は、やっぱり面白かった。なかでもジャズのイディオムを取り入れた「金の神を賛美せよ! 銀の神を賛美せよ! 鉄の神を賛美せよ!(以下略)」の部分では、オペラ「軍人たち」の作曲者B.A.ツィンマーマンなら、電気ギターを入れたかもしれないと想像した――もちろんウォルトンのこの曲のころにはまだなかったけれど――。
私には大歓迎のプログラムだったが、お客さんの入りはよくなかった。私が経営陣だったら真っ青だろう。
(2010.10.22.サントリーホール)