Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ターナー展

2013年11月01日 | 美術
 ターナー展。金曜日の夜間開館のときに行こうと思っていたが、当面、金曜日は予定が入っているので、さて、どうしたものかと思っていた。たまたま手にしたチラシに10月31日(木曜日)も夜間開館と書いてあったので、急遽出かけた。

 一番観たいと思っていた作品は「平和―水葬」。どんな画集にも載っているといってもいいくらいで、本展のホームページにも載っている作品だ。2艘の艦船の黒が異様だが、それが実物ではどう観えるのか、一度この目で確かめてみたかった。

 それは本展の最後のセクションにあった。そこにたどり着いて一目見るなり、美しいと思った。これは傑作だと思った。洋上に浮かぶ2艘の艦船。その黒色が少しも異様ではなかった。輪郭がぼやけているので――それはいかにもターナーらしい――、黒色が存在感を主張しながらも、しっくり画面に収まっていた。

 同時に空の青が美しかった。水平線には白い月が出ていて、日が落ち、夜に移ろうとする時間だろうが、空のうろこ雲はまだ見え、青い空も残っている。その空が透き通るように美しいのだ。

 海面も美しかった。鏡のように静かな海面。そこに空のうろこ雲が映り、また白い月光が映っている。2艘の艦船の黒い影が映り、水葬のかがり火も映っている。すべてを映す鏡のような海面。海の中まで透けて見えそうな海面だ。

 本作はターナーの友人が船上で亡くなり、水葬に付されたことを悼んで描かれた作品だ。その対作品として「戦争―流刑者とカサ貝」があることを本展で初めて知った。流刑者とはナポレオンのこと。「平和―水葬」が冷たい色調であるのにたいして、「戦争―流刑者とカサ貝」は燃えるように赤い夕陽が描かれている。その暖色系の色調が美しい作品だ。だが、海辺にたたずむナポレオンの姿が類型的に感じられる点に違和感があった。

 もう一つ圧倒的な印象を受けた作品は「レグルス」(↑チラシ)だ。入江のむこうから恐ろしいくらいの強い光が射している。この世のものとは思えない光だ。この光はどこかで見たことがあると思った。でも、絵ではない、では、なんだったか――。ふっと思い出した。メシアンのオペラ「アッシジの聖フランチェスコ」だ。聖フランチェスコが亡くなる最後の場面で、この世ならぬ光が射してくる、その光に似ていた。

 本展は日本にいながらターナーをまとめて観ることができる――ターナーを概観できる――ありがたい機会だ。
(2013.10.31.東京都美術館)

↓「平和―水葬」と「レグルス」は本展のホームページで観ることができます。
http://www.turner2013-14.jp/index.html

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