Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルラン&読売日響

2010年12月02日 | 音楽
 読売日響の11月定期は、常任指揮者カンブルランの指揮で実に凝ったプログラムを組んだ。古今のあらゆる音楽を知り尽くし、ありきたりのプログラムでは済ませないカンブルランらしいプログラムだ。

 1曲目はドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」をコンスタンが編曲した「ペレアスとメリザンド」交響曲。たとえばワーグナーの「ニーベルンクの指輪」を管弦楽曲に編曲したものがいくつかあるが、そういう作品に感じる継ぎはぎの印象がまったくない。コンスタンには同オペラを2台のピアノのために編曲した室内オペラ「ペレアスの印象」という作品があるそうだが、本作も同様の名前で呼ばれるべきものだ。演奏は、スリムで透明な音による、緊張感をはらんだもの。カンブルランの常任指揮者就任以来まだ1年もたたないのに、読売日響は今までにない個性を発揮し始めている。

 2曲目はコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏はヴィヴィアン・ハーグナー。遅めのテンポで始まったこの演奏は、甘いメロディーできかせるのではなく、抑えた表現で音の構造を明確にたどるものだった。こういう演奏できくと、渡辺和さんがプログラム・ノートで指摘している第2楽章中間部の「無調風な楽想」がことのほか面白い。

 3曲目はマーラー(ブリテン編曲)の「野の花々が私に語ること」(原曲:交響曲第3番第2楽章)。ブリテンがマーラーの編曲をしているとは知らなかった。同じく渡辺和さんによると、「マーラーの弟子でもある出版者エルヴィン・シュタインの意を受け、ベンジャミン・ブリテン(1913~76)がこの巨大作品をほぼ半分の二管編成への編曲を行った」そうだ。ブリテンとマーラー、さらにはその先のベルクとのつながりを示す傍証的な作品。演奏からはカンブルランのマーラーへの適性が感じられた。

 最後はシューマンの交響曲第4番。ただし第1稿だ。シューマンはクララとの結婚の翌年のいわゆる交響曲の年に、交響曲第1番「春」とともにこれを書いた。ただ、出版はされなかった。後年デュッセルドルフに移ってから、交響曲第3番「ライン」の完成後、これを改訂した。私たちが普通にきいているのは改訂版だ。

 第1稿と改訂版との大きなちがいが数か所あり、新鮮な感じがするが、それに触れると長くなるので、今は控える。全体としてはオーケストラの音が明瞭なことに驚いた。ブルックナーの作品と同様に、改訂版は後年になってからの巨匠の筆致で厚塗りされている。ブルックナーの場合は一概にいえないが、シューマンのこの曲では断然第1稿を支持したい。演奏は気迫みなぎるもの。第1稿のよさがわかったのも演奏のおかげだ。
(2010.11.29.サントリーホール)

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