Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルランの読響常任指揮者最終公演

2019年03月25日 | 音楽
 カンブルランの読響常任指揮者としての最後の公演。プログラムはベルリオーズの「ベアトリスとベネディクト」序曲、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番(ピアノ独奏はピエール=ロラン・エマール)そしてベルリオーズの「幻想交響曲」。

 1曲目と2曲目は、クリアーな音と引きずらないリズムが特徴の演奏。カンブルランと読響が培ってきた個性が現れていた。エマールのアンコールが独特な音楽だった。だれの曲だか見当がつかなかったが、帰り際にロビーの掲示を見たら、クルターグの「遊戯」第6集からの2曲だった。アンコールにクルターグとはエマールらしいと思った。エマールからカンブルランへの贈り物でもあったろうか。

 3曲目の「幻想交響曲」は名演だった。シルクのような光沢のある音の織物といったらよいか。例をあげるまでもないだろうが、イメージの共有のために、一つだけ例示すると、第1楽章の第1主題を提示する第一・第二ヴァイオリンとフルートが、まるで薄いヴェールが上から舞い降りてくるようなフワッとした音で演奏された。

 このような、しなやかで、上品な音が最後まで続き、乱れなかった。しかも第3楽章の中間部の動揺にはインパクトがあり、また第4楽章と第5楽章はダイナミズムに事欠かなかった。そして、それらすべての要素は、上質な音楽の枠内に収まり、そこからはみ出すことがなかった。

 カンブルランと読響は、メシアンのオペラ「アッシジの聖フランチェスコ」を筆頭に、数々の名演を繰り広げてきたが、「幻想交響曲」のようなスタンダードなレパートリーでもハイレベルな演奏を達成したことに、わたしは脱帽した。

 鳴り止まぬ拍手の中で、コンサートマスターに主導されて(カンブルランがキューを出したのではなかった)、「天国と地獄」のカンカン踊りの音楽が始まった。気が付いたように指揮を始めるカンブルラン。何人かの楽員(4~5人)が紅白のポンポンを持って踊りだし、カンブルランも促されて踊りだす。カンブルランにたすきがかけられ、花束が贈呈される。舞台の奥に「ありがとうシルヴァン、また日本で会いましょう」と書いたピンクの横断幕が掲げられる。なんと楽しい送別会だろう。

 カンブルランのソロ・カーテンコールは2回あった。多くの聴衆がカンブルランと別れを惜しんだ。カンブルランが多くの聴衆から愛されていることが、そのカーテンコールから実感された。カンブルランが読響と過ごした9年間は、カンブルランと読響にとってはもちろん、聴衆にも幸せな日々だった。
(2019.3.24.東京芸術劇場)

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