Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

リヒテンシュタイン展

2012年11月16日 | 美術
 リヒテンシュタイン展を観た。リヒテンシュタイン侯爵家が収集した美術品の数々。いつもはウィーン市内の「夏の離宮」で公開されている。第二次世界大戦の苦難の歴史をくぐった――その当時を語るヴィデオが上映されていて、興味深かった。

 本展の目玉であるバロック・サロンは、「夏の離宮」の展示方法を再現したとのこと。なるほど、宮殿のサロンを思わせる造りだ。天井にはアントニオ・ベルッチの4枚の天井画(「占星術の寓意」、「彫刻の寓意」、「絵画の寓意」、「音楽の寓意」)が嵌めこまれている。

 これらの天井画が面白かった。天井画は天井にあってはじめて面白さがわかるということが、よくわかった。天井から、占星術師の足が目の前に突き出てくる。また、制作途中の彫刻が、カンバスをのせた画架が、そしてチェンバロ奏者の椅子が、目の前に迫ってくる。これらの効果は、壁に掛けたら、よくわからなくなるだろう。

 バロック・サロンと並んで、本展のもう一つの目玉はルーベンス・ルームだ。3m×4mの大作をはじめ、ルーベンスの油彩が10点来ている。

 正直にいうと、ルーベンスの大作は苦手だ。工房制作のそれらの作品は、もちろんルーベンスの監督のもとに制作されているわけだが、どことなく薄味な感じがする。ヨーロッパの主要な美術館に行くと、天井まで届かんばかりの大作が並んでいるが、いつも横目でチラッと見るだけだ。

 そういう大作の脇に、ルーベンス直筆の作品がある場合がある。小品であったり、縦横1m以上ある作品であったり――。それらの作品は特別な力を放っていて、思わず引き寄せられ、ルーベンスとはすごい力量の持ち主なのだと、あらためて気付かされる。そういう経験を何度もした。

 本展では「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」がそうだ。チラシ(↑)で使われている作品。その可愛らしさは想像以上だ。純粋な瞳、それをよく見ると、左右非対称なことに気付く。たぶんそうだったのだろう。それを正確に描いたのだろう。愛する娘を描くルーベンスの姿が想像された。

 その他の作品では、やはりというべきか、ラファエロの「男の肖像」がすばらしい。冷たいまなざしと、そこはかとなく漂う優雅さ。衣服の赤と緑はラファエロの色だ。来年3月からは国立西洋美術館でラファエロ展が開催されるそうだ。そのニュースを聞いたときには我が耳を疑った。ビッグニュースだ。
(2012.11.14.国立新美術館)

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