Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フランス音楽回顧展Ⅱ

2018年09月02日 | 音楽
 サントリーホール サマーフェスティバルの最終日は、今年のプロデューサー野平一郎の「フランス音楽回顧展Ⅱ」。ブーレーズの「プリ・スロン・プリ」をメインに据えた演奏会。

 1曲目はラヴェル作曲/ブーレーズ編曲の「口絵」。ラヴェルにそんな曲があったのかと驚く。2台のピアノ/5手のための曲(つまり演奏者は3人必要)で、演奏時間は「わずか2分あまり」(プログラム・ノート)。それをブーレーズがオーケストレーションした。

 大きく分けると前半部と後半部になるようだが、とくに前半部はブーレーズの精緻なオーケストレーションと相俟って、まるで現代音楽のようだ。もしラヴェルの名を伏せられたら、それがラヴェルの曲だとは思わないだろう。

 演奏もよかった。ピエール=アンドレ・ヴァラド指揮の東響だが、精妙なアンサンブルと豊かな色彩感で、東響の好調ぶりがよく分かった。ヴァラドの指揮を聴くのは2度目。2008年のサマーフェスティバルでジェラール・グリゼーの「音響空間」を振った(オーケストラは東フィル)。そのときの衝撃は忘れられない。

 2曲目はフィリップ・ユレルの「トゥール・ア・トゥールⅢ」。わたしには未知の作曲家だったが、「音響空間」を彷彿とさせるホルンの動きがあり、またスペクトル楽派的な音の美しさが際立っていた。プロフィールに「スペクトル楽派の第二世代を代表する作曲家」とあった。グリゼー、ミュライユに次ぐ世代。

 3曲目はブーレーズの「プリ・スロン・プリ」。ソプラノ独唱は浜田理恵。フランス在住とはいえ、日本人の歌手がこの作品を歌う時代になったことに感慨を覚える。オーケストラの演奏も見事なもの。演奏が難しいはずのこの曲が、整然と解析するように演奏された。

 昔からCDでは何度となく聴いた曲だが、実演だとCDでは分からないことが多いことに気が付いた。まずオーケストラの配置だが、客席から向かって左側(下手)に弦楽器、右側(上手)に管楽器、中央に打楽器が配される。それらの3つの楽器群は独立して動く。3群のオーケストラのようだ。第5曲の「墓」では壮麗な音が鳴り渡るが、それはこうして生まれたものだった。

 第3曲「マラルメによる即興Ⅱ」と第4曲「マラルメによる即興Ⅲ」は、音楽が進むにつれて、だんだんテンポが遅くなったように思うが、実際はどうだったのだろう。わたしの体感だけだろうか。
(2018.9.1.サントリーホール)

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