Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

最後の印象派展

2015年09月22日 | 美術
 1900年、パリ万博が開かれたその年に、パリで第1回「画家彫刻家新協会(ソシエテ・ヌーヴェル)展」が開かれた。親密で穏やかな作風は、当時たいへんな人気を集めたそうだ。

 しかし時代は大きく変わり始めた。1905年にはマティスやヴラマンクのフォーヴィスムが登場し、1908年にはピカソやブラックのキュビスムが誕生する。ソシエテ・ヌーヴェルの画家たちは忘れられていった。

 本展はソシエテ・ヌーヴェルとその周辺に集った画家たちの作品を集めたものだ。わたしなどはその名を知らない画家ばかり。だが、1人だけよく知っている画家がいた。アンリ・ル・シダネル(1862‐1939)。大原美術館やひろしま美術館に名品があるので、ご存じの方も多いだろう。2012年にはシダネル展が全国を巡回した。わたしはそのとき初めてこの画家を知った。

 シダネルは本展でも7点が展示されている。全82点の中で中心的な存在だ。それもそのはず――なのかどうか――本展の監修者ヤン・ファリノー=ル・シダネルは、画家シダネルの曾孫だそうだ。ともかく、シダネルの作品に再会する機会を得たことは、望外の喜びだ。

 「テーブル、白の調和」(1927)は、白いシーツのかかった丸いテーブルに、ティーポット、ティーカップ、ミルク入れ、グラス、壺、籠、白い花を活けたガラスの花瓶、そして薔薇の花が置かれている。淡く青みがかった白の世界。緑とピンクと金色とがその白の世界に組み込まれている。題名どおり、白のハーモニー。

 「コンコルド広場」(1909)は2012年のシダネル展にも来ていた。そのときも強く印象に残ったが、今回もその印象に変わりはなかった。パリのコンコルド広場。雨が降った後の夜の光景。道行く人々の賑やかな声が聴こえるようだ。馬車も通っている。無数の街灯がともっている。雨で濡れた路面に映る。華やぎのある夜のパリ。

 チラシ(↑)で使われている作品は、エミール・クラウス(1849‐1924)の「リス川の夕陽」(1911)。前景に大きくリス川の流れが広がり、川岸には高い木立が並ぶ。その木立を透かしてオレンジ色の夕陽が射す。太陽は画面のちょうど真ん中にある。空に向かって放射線状に放たれた夕陽は、川面に映る。画面の中心から四方八方に散乱する夕陽。穏やかな作品が多い本展にあって、強い印象を与える作品だ。
(2015.9.22.東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館)

本展のHP

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