Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「自然と人のダイアローグ」展

2022年06月08日 | 美術
 国立西洋美術館で「自然と人のダイアローグ」展が始まった。ドイツの中部の都市エッセンにあるフォルクヴァング美術館の作品と国立西洋美術館の作品を並置したユニークな企画展だ。

 フォルクヴァング美術館には何度か行ったことがある。エッセンには演目および演出の両面で意欲的な活動を続けるエッセン歌劇場があり、わたしはオペラを観るために行ったのだが、昼間は暇なので、フォルクヴァング美術館で過ごした。静かな美術館の中で好きなだけ作品に向き合うことのできる贅沢な時間だった。

 本展に来ている作品には記憶に残っている作品もあれば、見たことのない(あるいはすっかり忘れている)作品もあるが、それらの作品が、質量ともに同等に、国立西洋美術館の作品と並べて展示され、しかもその並べ方が、ある共通のテーマにしたがって、そのテーマを深掘りするように並べられている点が特徴だ。

 さらにいえば、その並べ方は、フォルクヴァング美術館の作品と国立西洋美術館の作品を並べるだけではなく、フォルクヴァング美術館の作品同士を並べるケースもあれば、国立西洋美術館の作品同士を並べるケースもある。結果、展覧会全体が、作品同士の対話のざわめきで満たされているような印象を生む。

 チラシ(↑)にある作品はフリードリヒ(1774‐1840)の「夕日の前に立つ女性」だ。フリードリヒは本作を描いたころ、カロリーネ・ボマーと結婚した。作品に描かれているのはカロリーネだろう。夕映えの空にむかって両腕を少し広げている。そのポーズはカロリーネの感動を表すとともに、カロリーネの純粋さを表しているようにも見える。

 本作と並べて展示されている作品は、フリードリヒの周囲にいたカールス、ダール、シンケルの作品だ。詳細は省くが、カールスの作品はフリードリヒの作品(今では失われた「スイスの風景」だろう)の模写だ。またダールの作品はフリードリヒの「月を眺める男と女」(「月を眺める二人の男」の別バージョン)を参照していると思われる。

 本展のホームページ(※)に画像があるが、ガッレン=カッレラ(1865‐1931)というフィンランドの画家の「ケイテレ湖」という作品に惹かれた。2021年に国立西洋美術館が購入した作品だ。静かなフィンランドの湖。湖面に残る曲線は、フィンランドの民俗的な叙事詩「カレワラ」の英雄の航行の跡だそうだ。本作品はスイスの画家ホドラー(1853‐1918)の「モンタナ湖から眺めたヴァイスホルン」と並べて展示されている。スイスの湖とフィンランドの湖が共振し、互いに引き立てあっているようだ。
(2022.6.7.国立西洋美術館)

(※)本展のホームページ

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