Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

リープライヒ/日本フィル

2019年03月16日 | 音楽
 日本フィルの定期にアレクサンダー・リープライヒが初登場した。わたしはリープライヒをサントリーホール・サマーフェスティヴァル2014で聴いたことがある。オーケストラは東京交響楽団で、曲目はフランスの現代作曲家パスカル・デュサパンの新曲を中心とするものだった。その鮮やかな指揮に強い印象を受けたわたしは、リープライヒって何者?と思った。

 今回プログラムに掲載されたプロフィールを見ると、ドイツのレーゲンスブルク生まれで、現在はポーランド国立放送交響楽団とプラハ放送交響楽団の首席指揮者兼芸術監督を務め、さらにガルミッシュ=パルテンキルヒェンのリヒャルト・シュトラウス音楽祭の芸術監督を務めているそうだ。実力のほどが窺われる。

 1曲目はロッシーニの「どろぼうかささぎ」序曲。きめの細かい音が日本フィルから流れ出た。インキネンの薫陶を受けた成果が感じられる。その意味で、日本フィルはよいタイミングでリープライヒに出会ったと思う。ロッシーニの中でも堂々たる序曲の一つのこの曲、その最後まできめの細かさが保持された。

 2曲目はルトスワフスキの交響曲第3番。この曲は昨年9月にアントニ・ヴィト指揮の都響が名演を聴かせたが、さて、日本フィルはどうかと、どうしても比較してしまう。日本フィルで特徴的だったことは、フレッシュな音だ。都響の場合は音のパワーが圧倒的だったが、日本フィルの場合は(まるで洗い上げたような)フレッシュな音が鳴った。その音は1曲目のロッシーニとも通じた。

 リープライヒは今年12月に日本フィルに再登場して、ルトスワフスキの「オーケストラのための書」を指揮する。今回の交響曲第3番を単発で終わらせるのではなく、継続してルトスワフスキに取り組むことは、日本フィルにとって得るものが大きいと思われる。

 3曲目はベートーヴェンの交響曲第8番。この曲では(1曲目のロッシーニとも2曲目のルトスワフスキとも趣向が異なり)音の勢いに主眼を置いているように感じられた。それはベートーヴェンが保養地のカールスバートで耳にしたポストホルンの響きが第3楽章のトリオで引用され、その背後には「不滅の恋人」がいたと推測されるこの曲にふさわしい幸福感を生んだ。弦は12型だったが、12‐10‐8‐7‐5の編成で、チェロとコントラバスの動きが浮き出るときがあり、それがおもしろかった。

 なお、当日は田野倉雅秋がゲスト・コンサートマスターを務めた。田野倉は今年9月にコンサートマスターに就任する。大歓迎だ。
(2019.3.15.サントリーホール)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする