Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ポンペイの壁画展

2016年06月28日 | 美術
 会期末が迫ってきた「ポンペイの壁画展」に行ってきた。気になっていた展覧会なので、行けてよかった。東京会場は7月3日で閉幕するが、その後、名古屋、神戸、山口、福岡に巡回する。

 今から20年以上前になるが、ポンペイに行ったことがある。9月下旬だったが、暑くて、暑くて、汗を拭きながら歩いた。夾竹桃の紅色の花が記憶に残っている。あとは近くのレストランで飲んだ白ワイン。「ラクリマ・クリスティ(キリストの涙)」という名前に感心した。その後日本でも見かけるようになった。

 本展の壁画は、ナポリ国立考古学博物館などの収蔵品。いうまでもないが、ポンペイでは見られない。ポンペイは遺跡なので、風雨に晒されるため、博物館などに移して保管されている。

 これらの壁画は、裕福な家や、レストランや、その他の生活の場のためのもので、今でいう芸術とは少し違う。ヴェスヴィオ山が噴火した紀元後79年8月24日時点の人々の生活を伝えるものだ。

 「カルミアーノ農園別荘、トリクリニウム」が、スケールの大きさからいっても迫力があった。平面図が掲示されているが、中庭をはさんだコの字型の大きな建物で、そこでは葡萄酒を製造していた。葡萄の圧搾室などを備えている。3枚の壁画は食堂の三方を飾っていたもの。残りの一方は中庭に面した開口部だった。当時を彷彿とさせる展示を見ていると、客人を招いた宴のにぎやかな声が聞こえるようだ。

 一方、芸術性の高い壁画もあった。「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」と「ケイロンによるアキレウスの教育」。ともにポンペイ近郊のエルコラーノで発見されたものだ。皇帝崇拝の場(アウグステウム)を飾っていたというから、特別の壁画だったのかもしれない。力のみなぎる構成は、他の壁画とは一線を画す。前者は初来日。本展の目玉だ。

 もう1点だけ挙げると、「有翼のウィクトリア」に惹かれた。ウィクトリアは勝利の女神のはずだが、本作では男性として描かれているのだろうか、堂々たる体躯だ。まるで石膏像のような円錐形で描かれている。背景の青色も印象的。どこか近代的な感覚がある。

 なお、本展のキャプションで知ったのだが、ポンペイの朱色には、当初は黄色で火砕流の高熱によって変色したものがあるそうだ。元々の朱色と変色した朱色とは専門家でも見分けが難しいそうだ。意外な事実‥。
(2016.6.27.森アーツセンターギャラリー)

主な壁画の画像(本展のHP)
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