Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2015年04月12日 | 音楽
 都響では大野和士が音楽監督に就任したが、東京シティ・フィルは高関健が常任指揮者に就任した。その初定期。曲はスメタナの「わが祖国」全曲。

 第1曲「高い城」では冒頭、2台のハープが豊かな音量で鳴った。高関健による新時代を高らかに宣言するような観があった。だが、その後の展開には乗り切れなかった。もっともわたしは、この曲の実演ではそういうことがあるので、様子を見た。

 第2曲「ヴルタヴァ(モルダウ)」も、エンジンが掛かりそうで掛からない、そんな感じがした。少し不安になった。楽曲を隅々まで考え抜き、がっちり構築する高関健と、体当たり的に熱い演奏をする東京シティ・フィルとでは、タイプがちがうのかと、このときは考えた。

 第3曲「シャルカ」では音楽に流れが出た。山口真由のクラリネット・ソロが光った。3月定期のときのラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲で見事なフルート・ソロを聴かせた神田勇哉ともども、東京シティ・フィルの期待の若手だ。

 休憩後の第4曲「ボヘミアの森と草原から」ではエンジン全開になった。冒頭のトゥッティの華やぎのある音で聴衆の心を一気につかんだ。その後の展開も緩急豊か。音楽の流れに乗ることができた。

 第5曲「ターボル」の冒頭では充実したずっしりと重い音が鳴った。その後の展開も雄弁だった。東京シティ・フィルの持ち前の熱い演奏が、高関健の構築感の中で脈打った。両者一体となって感動的な演奏が生まれた。それは第6曲「ブラニーク」まで続いた。

 その演奏を聴きながら、1985年1月の日本フィル定期での高関健のデビューを想い出した。メインの曲はストラヴィンスキーの「春の祭典」だった。小柄でずんぐりした、マッシュルーム・カットの無名の青年(若き日の高関健)から、大地を揺るがすような音が出た。びっくりした。鮮烈なデビューだった。それから30年たった。近年は、整理されすぎて、面白みに欠ける演奏もあったが、今回、あのデビューのときの音が戻ってきた。

 大きな拍手が起こり、ブラボーの声も飛び交った。高関健による新時代は好スタートを切った。聴衆はその新時代を温かく迎えた。

 今後の活動が高関健にとっても、東京シティ・フィルにとっても、実り多いことを願う。各々の良さはそのままに、両者がかみ合って、ともに一段上の高みにのぼることを――。その兆しはすでに現れている。
(2015.4.11.東京オペラシティ)
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