Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ルル

2015年03月15日 | 音楽
 「ルル」の開演時間は19:30だった。えっ、そんなに遅いの? 2回の休憩を入れたら終演は23:00を過ぎるのは間違いない。ホテルに戻るのは24:00か――と。

 劇場に入ってプログラムを見たら、休憩は第1幕の後に1回だけ、公演時間は約3時間と書いてあった。休憩1回はともかく、約3時間というのは――。

 公演が始まって分かったのだが、プロローグはカットされていた。いきなり第1幕から始まった。舞台は、どう見ても、中古自動車の解体工場だ。そこですべてのストーリーが進行する。先走って言ってしまうと、第2幕以降もこのセットは変わらなかった。舞台装置はエーリッヒ・ヴォンダー。鮮烈な舞台だ。

 プロローグのカットに加えて、もう一つ、驚くべきカットがあった。第3幕第1場(パリの場)がそっくりカットされていた。第2幕の最後にシェーン博士が射殺され、そのまま、いきなり第3幕第2場(ロンドンの場)に移行した。

 これら2つの大胆なカットに度肝を抜かれた。でも、それが不満ではなかった。演劇的な面白さに惹きこまれた。第3幕第1場の大アンサンブルを聴けなかったわけだが、自分でも不思議なくらい、残念な感じがしなかった。

 これは徹底して演劇的な演出だ。演劇では原作の戯曲を大胆に再構成することが当たり前のようにおこなわれているが、オペラの場合は、作曲されているので、それは難しいと思っていた。アンドレア・ブレート(前日の「ヴォツェック」と同じ演出家)は、その制約の中で、最大限に演劇的な演出を追求したと思う。

 思えば「ルル」では、今までも衝撃的な経験をしている。ハンブルクで観たペーター・コンヴィチュニーの演出とドレスデンで観たシュテファン・ヘアハイムの演出がその双璧だ。そこに今回の演出が加わった。

 音楽的には、コンヴィチュニー演出はベルクが書いた音楽だけを使い(一部再構成)、ヘアハイム演出は(ツェルハ補筆版ではなく)クロケ補筆版を使っていた。そして今回は新たにデイヴィッド・ロバート・コールマンが補筆した版を使っていた。例のヴェーデキントが作った小唄(ベルクも引用している)を拡大して、水溜りのように淀んだ感じが出ていた。

 バレンボイムの指揮は、説明的なところがあったが、歌手の旋律線をオーケストラのどのパートが支えているかを克明に辿ることができた。その点で興味が尽きなかった。
(2015.3.7.シラー劇場)
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