Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

都響1月定期Bシリーズ

2012年01月25日 | 音楽
 都響の1月定期Bシリーズは「日本管弦楽の名曲とその源流」の第14回。作品と演奏、ともに上質の演奏会だった。

 1曲目は野平一郎さんのオーケストラのための「トリプティーク」。オーケストラの洗練されたソノリティが持続する曲。冒頭、2台のハープが弦を軽くこすって出す最弱音のノイズにピアノが重なったとき、その音の鮮やかさに目をみはった。思わずピアノ奏者を見たら大井浩明さんだった。さすがだ。昨年11月にブーレーズのピアノ作品全曲演奏会を聴いたばかり。今回の演奏会には最適の人材だ。

 正直にいうと、実はこの曲の初演を聴いているが(2006年7月の沼尻竜典指揮日本フィル)、まったく思い出せないので愕然とした。いったいあのときはなにを聴いていたのだろう。帰宅後、当日の日記(といってもわずか数行のメモだが)を開いてみたら、演奏にたいする文句が書いてあった。そのときはそれ以上先には、曲の把握には、進めなかったのだろう。

 今回はすばらしかった。これはもうヴィルトゥオーゾ・オーケストラだ。コンサートマスターは四方恭子さん、ヴィオラのトップに店村眞積さん。指揮は野平さん自身。

 2曲目はチェロとオーケストラのための「響きの連鎖」。(1)荒々しい自然のなかに木が育ち、(2)木が伐採されて楽器が作られ、(3)楽器が語り始めて、(4)やがて響きは宇宙へ届くというプログラムをもつ曲。オーケストラ編成は、(1)は打楽器とピアノのみ、(2)は弦楽5部、(3)は2管編成、(4)は3管編成と次第に拡張する。最後にエピローグがあり、(1)と同様に打楽器とピアノのみになる。

 これは面白かった。プログラムを意識せずに音楽だけ純粋に聴いたが、実に面白かった。チェロは出ずっぱりだ。堤剛さんの独奏。すばらしいという言葉を通り越して、感動的だった。2006年10月の初演のときも堤さんだったそうだ。功なり名遂げた大ベテランが、自分よりも年若い作曲家の作品を真剣に弾く姿は美しい。

 3曲目はブーレーズの「エクラ/ミュルティプル」。これはワーク・イン・プログレスの作品で、今回は2002年最新改訂版の日本初演。ブーレーズの作品はどれもそうだが、この曲もCDで聴くより生で聴いたほうが断然面白い。音の新鮮さが並みではない。最後の、終わろうか、終わるまいかと自問自答している部分まで、一瞬たりとも退屈することはなかった。指揮はイタリア在住の作曲家・指揮者の杉山洋一さん。大井浩明さんはチェレスタに回り、ピアノは長尾洋史さん(だと思う)。
(2012.1.24.サントリーホール)
コメント (2)
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