Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

トリスタン・ミュライユの音楽

2010年05月28日 | 音楽
 東京オペラシティの「コンポージアム2010」の招聘作曲家(武満徹作曲賞の審査員)はトリスタン・ミュライユ。私のような呑気な音楽愛好家でもその名前を知っているスペクトル楽派の代表的作曲家だ。盟友のジェラール・グリゼーの「音響空間」が2008年8月のサントリー音楽財団「サマーフェスティヴァル2008」で演奏され、私は強烈な印象を受けた。そのときから、次はミュライユの「ゴンドワナ」をきいてみたいと思っていた。その機会が意外に早く訪れた。

 当日のプログラムは次のとおり。
(1)2台のオンド・マルトノのための「マッハ2,5」(1971年)
(2)オンド・マルトノと小オーケストラのための「空間の流れ」(1979年)
(3)オーケストラのための「ゴンドワナ」(1980年)
(4)大オーケストラとエレクトロニクスのための「影の大地」(2003-04年)
 演奏は、野平一郎指揮の新日本フィル(2)~(4)、オンド・マルトノは原田節(1)~(2)およびトリスタン・ミュライユ(1)。

 会場に入って驚いたが、ほとんど満席。私の席は2階正面だったが、そこから見下ろすと、1階席はびっしり埋まっている。2階正面も満席。2階両サイドもほとんど満席。なお3階席は使われていなかった。
 こんなに入るものなのだろうか。おそらく作曲科の学生さんを含めて音楽関係者がこぞって来ているのだろう。大御所の湯浅譲二さんや池辺晋一郎さんの姿もおみかけした。若い人の活気にみちたこの雰囲気のなかでおみかけすると、「○○先生」とよばないと悪い気がした。

 1曲目の「マッハ2,5」は音響の面白さで一気にきいてしまった。
 ところが2曲目の「空間の流れ」は勝手がちがった。リング変調されたオンド・マルトノの音はともかく、絶えずテンポが伸縮する構造が、私に曲の把握を困難にさせた。
 3曲目の「ゴンドワナ」も常にテンポが伸縮していたが、こちらの場合は音量や音色の変化を伴うので、興味深くきいていられた。どうやらテンポの伸縮は本質的な方法論に由来しているようだった。
 4曲目の「影の大地」はライヴ・エレクトロニックも加わる曲だった。

 プログラム誌に載っていたジュリアン・アンダーソンという人の解説によると、「ゴンドワナ」のクライマックスにかけての部分は、シベリウスの交響詩「トゥオネラのレンミンカイネン」をモデルにし、「影の大地」は全体的にスクリャービンの交響曲第5番「プロメテウス―火の詩」をモデルにしているとのことだった。私には前者はまったくわからなかったが、後者は、いわれてみると、そうかもという気がした。
(2010.5.27.東京オペラシティ)
コメント
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