Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ボストン美術館展

2010年05月11日 | 美術
 森アーツセンターギャラリーでボストン美術館展が開かれている。ありがたいことに、会期中無休、夜8時まで開館になっている。これなら仕事が終わってから、しかも都合のつく日に行けるので、たいへん助かる。私は昨日、月曜日の夜に行ってきた。

 最近はブログが全盛で、しかも美術関係には優秀なブロガーが沢山いらっしゃるので、事前にあらかたのことはわかってしまう。その分、会場での発見が少なくなっているともいえるが、それは仕方がない。会場では自分なりの見方ができるかどうかが大事になる。

 ボストン美術館展は、ベラスケスからレンブラント、マネやモネ、そしてマティスに至るまで、時代も国も幅広い作品が集められている。会場に入ってまず一通りみて歩いたときには、あっさりした印象だったが、もう一度入り口に戻って、気になる作品をみていったら、やはり面白かった。

 一番面白かったのは、ベラスケスと同時代人のスペインの画家スルバランの一対の作品、「聖ペトルス・トマス」と「コンスタンティノープルの聖キュリロス」だった。元々は大きな祭壇画のプレデッラ(裾絵)の一部だったそうだが、そこに描かれている聖人像が浮かび上がってみえる。強烈な光、深い皺(聖ペトルス・トマス)と大きな本(聖キュリロス)のインパクト、堅固な存在感。いつまでみていても飽きなかった。

 コローの「花輪を積む娘」もよかった。この絵をよいと感じたのは、2008年のコロー展をみたからだ。それまではしっかりした認識をもっていなかったが、同展をみてコローのよさがつかめたと思った。「花輪を積む娘」は、抑えた渋い色調の画面に、慎ましい娘が立っていて、背景の樹木は風に吹かれたように騒いでいる。コロー特有の銀灰色が味わえる作品だ。

 同展のチラシにも使われているゴッホの「オーヴェールの家々」は、実際にみて、これはすごいと感じた。1890年、ゴッホが亡くなる年の作品。いまさらいうまでもないけれど、この年には異常なまでに生命の燃焼を感じさせる作品が生まれていて、この作品もその一つ。藁葺き屋根の多彩な色彩が圧倒的だ。中景の橙色ののっぺりした屋根も妙に気になる。

 以上、なんの脈絡もない3人の画家をあげたが、要するにこの展覧会は、自分の好きな画家を好きなように鑑賞するタイプのものだ。一枚一枚の作品は比較的地味だが、それなりに一定の水準を維持しているので、気に入る作品が必ずみつかるはず。私は最初の印象とは異なり、ずいぶん面白い時間を過ごした。
(2010.5.10.森アーツセンターギャラリー)
コメント
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