後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔65〕江戸川区では全小学校で休み時間に一斉に外遊びを導入するというのですが…。

2016年01月06日 | 学校教育
 連れ合いからこんな教育記事があるよと教えてもらいました。教育とは何かということを考えてみたいのでそのまま引用します。

●外遊び 体力向上 休み時間活用、全小学校導入へ 東京・江戸川区
(毎日新聞2016年1月5日 東京夕刊)

 鬼ごっこやゴム跳びなどの昔ながらの外遊びを全校で授業の合間に行い、体力改善を図る取り組みを、東京都江戸川区が来年度から全小学校71校で始める。試験的に導入した学校で、平均以下だった体力テストの成績が区内トップレベルに高まったため。区教育委員会によると、区市町村の全校で一斉に外遊びを導入するのは、全国的にも例がないという。【柳澤一男】

 外遊びを2013年1月から試験的に採り入れている区立西葛西小学校。週に1回、授業の合間にある25分間の長い休み時間を「わくわくタイム」と呼んで充てている。
 「みんなで楽しく遊びましょう」。放送が流れると、737人の子どもたちが一斉に校庭へ飛び出した。20?30人ずつが輪になり、先生に教わりながら「十字おに」や「ぐるぐるおに」「Sけん」「長縄」など22種類の遊びを始めた。
 「グー、パー、フミ、フミ、回ってジャンプ!」。1年生が笑顔でゴム跳びをし、男の子も「みんなで跳ぶのは楽しい」と喜んだ。
 同校では12年度までほとんどの学年で、体力テストの成績が全国平均はおろか、全国平均より低い都平均さえも下回っていた。
 そこで山下靖雄校長が外遊びの時間を導入。教員は事前に外遊びのルールを覚え、リーダー役になった。「私たちが子どものころは放課後に友人と遊び、自然に体を動かしていたが今は違う。体育が苦手な子にも体を動かす楽しさを感じてほしかった」と話す。
 その結果、14年度には男子が4学年、女子は5学年で、体力テストが全国平均を上回り、区内でトップレベルになった。特に反復横跳びや20メートルシャトルランなどが向上したという。子どもの意識調査では「体を動かすことが楽しい」「多くの人数で体を動かすことが楽しい」との回答が約100人ずつ増えた。
 これを受け、区教委は外遊びを区立の全校、約3万5000人に広げることにした。外遊びの時間や頻度は状況に応じて各校が決める。
 区教委指導室の稲垣達也室長は「江戸川区の子どもの体力は都内でも低い方。昔ながらの外遊びをする子どもは減り、ゲームや室内で遊ぶ姿が目立つ。まず校庭で外遊びのコツを覚え、体力向上につながれば」と話す。

  江戸川区といえば演劇教育の重鎮、刀禰佳夫さんが講師などで活動されたり、日本演劇教育連盟の研究部長の高崎彰さんが指導室長として活躍されたことがあるところで、リベラルな地域性に好感を抱いていたものです。だからこそ、この記事を読んだとき、あれあれ何か違うなと直感的に感じたのです。
 子どもにとって遊びが重要であるというのはいうまでもありません。友だちとの遊びのなかで人との付き合い方、コミュニケーションを学ぶのです。そこには自然との出合いもあり、子どもの身体や心を育んでくれます。学びは遊びを抜きにして考えられません。そうした遊びや学びから労働に発展してくるのではないでしょうか。
 ただここでいう遊びとは子どもたちの主体的自主的な活動を指します。今回の江戸川区の一斉遊びは、管理されたなかでの「遊び」というニュアンスが強いようです。体育を研究している学校が、業間体育と称して、休み時間に全校体育をすることがあります。そうした流れを汲むもののようです。授業的な遊びといってもいいのでしょうか。
 子どもたちにとっては休み時間は貴重なものです。友だちと自由に遊んだり、本を読んだり、おしゃべりをしたりと、息抜きの時間に違いありません。
 また、教師にとっても業間遊びに問題は山積です。午前中の中休みに教師はさまざまな仕事をこなさなくてはなりません。子どもたちの日記や親からの連絡帳を見たり、教材準備の時間であるかもしれません。委員会活動の指導をしたり、教師たちの会議が組まれる場合もあります。
 教職員の勤務ということで、次のようなサイトが見つかりました。出所ははっきりしないのですが、私の現役時代の認識と一致しているので、現状でもそう大きな変更はないと思われます。参考までに提示しておきましょう。

●教職員の勤務
(1)勤務時間
 ① 学校職員の勤務時間の割り振りは当該校長が行う。
 ② 職員の正規の勤務時間は、1週間あたり40時間とし、職務の性質上これに拠り難い場合、別に定める期間を通じ1週間あたり40時間とする。
 ③ 休憩時間
  (ア)勤務時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間与えられる。
  (イ)勤務時間の途中、全職員一斉に与えること
  (ウ)職員に自由に利用させること
 ④ 休息時間
  (ア)勤務時間4時間について15分の休息時間を置かなければならない。休息時間は、正規の勤務時間の一部である。
  (イ)給与支給対象の拘束時間で、自由利用の原則はない。

 これらの論拠になっているのが労働基準法です。ここには休息の規定はありません。

●労働基準法
(休憩)
第三十四条  使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
○2  前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。(略)
○3  使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

 江戸川区の業間遊びは教師にとっては勤務時間内の休息の時間になっているはずです。
 さらに、週1回の試みであれば良いのではないかという人もいると思いますが、年間を通すと30数回ということになります。しかも江戸川区全校で取り組むということです。こうしたことに教育における画一化、統制化の兆しを感じてしまうのは私だけでしょうか。

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