後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔474〕西崎さんの「憲法審査会ウオッチング 5.12衆議院 主題憲法9条(公式議題は国民投票法を巡る諸問題)」です。

2022年05月17日 | メール・便り・ミニコミ
 精力的に憲法審査会ウオッチングを続ける西崎典子さんの貴重なレポートです。感謝しつつ拝読します。

◆傍聴を続ける西崎より
BCCで知り合いの皆様にお届けします。皆様からさらに広まりますよう。

■4.7院内集会、田中弁護士の呼びかけ
「大切なのは傍聴して、中継を見て、議事録を読んで、審査会の最前線を知ること。
学習会や署名をして、選挙に勝つこと。
市民・法の専門家・学者・研究者、皆で頑張りましょう」
■さらに
「審査会委員に、ファクス・電話・メールで激励・意見・疑問などを届けましょう」

■訂正事項 謹んで下記のとおり訂正いたします。
 4.28ウオッチング  誤) 相沢一郎自民党議員
           正) 逢沢一郎自民党議員

 4.14ウオッチング   誤)(共産党の)不破委員長
            正)      志位委員長



■本日の主題は憲法9条でした。「我が国をめぐる安全保障環境が厳しさを増している」

「国防規定」の表現を使いながら9条の論点に入りました。


■公式の議題は“国民投票法の改正を巡る諸問題”となっており、森会長は

「…憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について討議を行います」と冒頭に述べたのですが。


■前回5.12の審査会では奥野幹事が抗議を続ける中、新藤幹事は、自民党等が共同提案した同法の改正案を

「ご審議の上、速やかに御可決くださいますよう…」で締めくくりました。

今回は引き続きこの件を審議することもあり得たはずですが、

議題と異なる、9条の本格的な討議の方に力が働いたのでしょうか。



■国民投票法と緊急事態条項についての意見も少し出ました。

奥野幹事は、CM規制等が手当されない改正案のままでは改正発議はできない、とこの日も述べました。



■以下が主な発言です。 足立委員がまた暴言を発しています。ずっと後ろですが、チェックください。 

 (全体で話されたことの一部分です。願わくば未定稿全文を読まれますよう)

  どのような9条論が展開されているか、論法と内容を人にに知らせる・反論することが私たちに望まれます。

  長文ですが、お付き合いくださいますよう。


・新藤幹事 p.1中段~2下

「今の憲法にはない、国防規定について議論をし、憲法に反映させることは、

 緊急事態条項と併せ最優先で取り組むべき。

「自衛隊は国民を守るための実力組織として…国民の強い信頼を得ている。しかし、

 自衛隊が合憲だと言い切る憲法学者は2割程度しかいないという指摘もあり、

 自衛隊は違憲とみなす政党もある。自衛隊が憲法に位置付けられていない状態を

 放置しておくわけにはいかない。


「近年は…新たな安全保障上の脅威が増大している。このような安全保障環境の変化に対応するため、

 2015年、我が国は平和安全法制を整備し、存立危機事態における集団的自衛権の限定行使を可能とした。

 いかなるときも防衛体制の整備は必須であるが、

 ここまで整備を進めてきた自衛隊が、憲法に位置付けられていない。

 

 私たち自民党が提案している国防規定と自衛隊を明記する憲法改正は、

 75年前に占領下で制定された憲法を独立国家として完成させようとするものです」



・奥野幹事 p.2下ー4下

「安全保障について考えることは必要だし、防衛力も必要に応じて整備していくことは必要。

 しかしそれが直ちに憲法改正に結びつくのか、違和感を覚える。

 自民党案のように9条一項、2項を残したうえで9条の2を更に設けることで

 自衛隊がフルスペックの集団的自衛権の行使ができるのかどうか、こういう議論が再燃する。

 憲法13条との関係でフルスペックの集団的自衛権は認められず、問題がある」。



「自衛隊を違憲だと言う人はほとんどいない。自衛隊は国民の間に定着しているから、

 憲法を改正する必要はない」。

「専守防衛の見直しなどと言う話が新聞紙上に出てくるが、…これは先制攻撃を容認すると

 いうことにつながるから、まさに国際法違反になる。先制攻撃をすることは…国連法違反、

 国際法違反になりますから、専守防衛の見直しという言葉が安易に出てくること自体が問題。

 世論調査では、専守防衛は約7割の国民が守るべきと言っている。

 専守防衛を見直すべきだという間違った議論をただす議論はしていきたいし、

 9条を使って日本をしっかり守れるということも反論していきたい」。



・小野委員(維新)p.5上

「残された会期内において我が国の安全保障と憲法に係る問題について

  審議するよう提案します。p.5下

 

 次期参議院選挙において憲法改正国民投票も同時に実施するべきと、

 松井一郎代表は述べてきたが、これは断念せざるを得なくなりました」

 (※注、もともと維新らしい無茶な、ありえない設定でした)



「参院選では安全保障環境をどう認識し、安保政策をどう考えるか、

 憲法改正についてどのような具体案を出すのかについて、各政党が国民に明確に示すことが政治の責任である」

( ※注、改憲政党は、参院選で具体的な内容付で必ず改憲を打ち出してきます。

 立憲野党は「9条を守ろう」というだけでは弱いのでは?と危惧されます)



・北側委員(公明党) p.14下ー15下

(※注我が国を取り巻く安全保障環境は一段と厳しくなっていると述べつつ平和安全法制を評価する。

 この時点では9条の改憲にまでは踏み込まない)。


「9条の下でどこまで自衛隊の措置が可能かという議論をした結果、平和安全法制ができた。

 この法制はますます重要性を増している。日米間の連携が強化され、米軍が攻撃された際も…

 専守防衛の範囲内で自衛隊が米軍を守ることができるようになった。共同訓練や情報共有も進んだ」



「憲法の三原理である国民主権、基本的人権の尊重を堅持しながらも、日本の安全保障に万全を尽くしていく必要がある。

これまでも我々は専守防衛を堅持しながら、…平和安全法制を整備してきた」。



・玉木雄一郎幹事 p.7下ー9上

「9条は2項で戦力の不保持と交戦権の否認を認める一方、現実の防衛政策として、

 国際的には戦力と言える自衛隊を保持している。この条文と現実との乖離を埋めるため、

 政府は現実を追認する形で、戦力は保持できないが、自衛のための必要最小限度の実力行使、

 自衛隊行動権は容認されるという、容易には理解しがたい解釈を積み重ねてきた。

 その結果、憲法9条は、現実を規律、統制する規範力を事実上失っていると思う。

 

 さらに2015年、戦力不保持、交戦権否認をうたう憲法9条の下で、

  集団的自衛権の一部容認まで踏み込んだ安保法制を成立させたことで、

 憲法9条の規範力、統制力はいよいよ限界を突破し、9条2項の空文化に拍車をかけたと言える。

 逆に言えば、現行憲法改正の必要性がこれによって著しく低下したとも言える。p.8中

 

 厳しさを増す安全保障環境の中で憲法9条に現実的な対応を取る必要性を正面から認め、

 …現在の解釈ではできないことは一体何か、

 改正によって得られる意義、必要性を冷静に見極める必要がある」


「自衛隊を明記するかどうかの形式的な議論の前に、自衛隊にいかなる自衛権権の行使を憲法上認めるか、

その行使を担う実力組織は戦力あるいは軍隊なのか、という本質的な議論が必要だ」 p.8下

 (※注.玉木委員の主張に対しては、石破委員は賛意を示す(「最小限度」という「物差し」についてなど)p.12。

 が、主張に反応した他の委員は否定的な見解でした)。



・赤嶺政賢委員 p.9下-10下

「憲法の原則に反する現実を正す議論が必要だと指摘してきたが、与党は問題提起に応えていない。

 憲法が蹂躙されている沖縄の実態は重大だ。

 復帰後も広大な米軍基地は温存され、憲法の上に日米地位協定が置かれていて、

 米軍関係者の犯罪行為、騒音、異臭、有害物質の流出に県民の人権は脅かされ続けている。

 今は平和憲法そのものが壊されようとしている。

 南西諸島での敵基地攻撃能力保有の検討を進めている。

 武力衝突が起これば真っ先に犠牲になるのは沖縄県民だ。

 憲法を変えるのではなく、憲法9条に基づく外交を粘り強く行うことだと強調したい」。



・北神委員 p.10下

「まだ手をつけてない論点の憲法第9条を論ずるべき」

「台湾有事は日本有事だという覚悟をすべき」

「我が国が専守防衛にとどまり、米国が攻撃能力を担うという方針で、

 中国をほんとに抑止し、平和を確保できるのか」

「今回のロシアと同じように、台湾有事の際、中国が核の威嚇をした場合、

 米国が今回と同じように身動きが取れなくなるかもしれないと推測するのは、

 私の被害妄想に過ぎないのでしょうか」



・野田佳彦委員 p.13

(※同人は、今期は発言したことがなかったが、この日、

 それまでの議論に全く関係がない話題を持ち出しました。

 目的は与党側の論議をそらすためか、逆にすり寄るためか?

 常識的には立憲野党の主張を補強する立場にあるはずです)(奇妙なのであえて取り上げます)。


  同委員の主張は、皇室制度に係る安定的な皇位継承を確保する観点については、

  憲法的な視点から審査会でも議論が必要というものでした。

  ⇒新藤幹事の回答は国会の議論のゆくえをまず見届けるというもの。p.14中



・足立康史委員

三つの質問を提出した。p.15下


質問1) 玉木委員に対し

「憲法9条の規範力が崩壊したみたいなことには賛同できない。

自衛権については、日米同盟の中で存在しているもので、

米国のスタンスによって伸縮しかねない内容だ。憲法にいわゆる自衛権の範囲なるものを既定していく

立憲的改憲論というのは大変危険なものであって、合理性の低いものである。

私たちの立場から、本国会中に憲法9条に自衛隊をどう明記するのか、

イメージ案を提示していきたい。

そうした意味で規範力がなくなっているというのは撤回していただきたいと思う」。


 ⇒玉木委員の回答 「規範力はやはり一定程度落ちていると思う。きちんとした条文に沿った議論は必要。

  自衛権が米軍によって伸びたり縮んだりすると言うこと自体あり得ない。等」p.16下



質問2)赤嶺委員に対し p.16中

「…あらゆる手段を使って防衛をするというのは、火炎瓶や武器を手に取って戦えと

言っているようにしか聞こえない。改めてそういうことかどうか、答えてほしい。



(※注 4.14の審査会のときの自身の発言を再び持ち出したもの。

「日本に対する急迫不正の侵略が起きた場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を用いて…守り抜く」

という志位委員長の発言にからめ

「あらゆる手段とは何か」を足立委員が赤嶺委員に尋ね、

その際「一般国民に対し火炎瓶や武器を手に取って戦えとおっしゃっている以外には想定できない。

…破防法の監視対象になっていることの理由も理解できる」(未定稿4.14p.14下)と、揶揄している)。




質問3)奥野幹事に対して p.16中

「5.3の集会で…ロシアよりひどいのが今の与党だと、べらべらべらとおっしゃって、

 今の憲法審査会は、各党がいかに改憲に熱意があるか、それを示すPRの場になっていますと、ひどい侮辱をされている。十秒だけあげるので、謝罪をして ください」


(※注.「ひどい侮辱をされている」と言うが、ひどい侮辱発言を頻発しているのは、足立委員他の維新の委員です。

 今までにも取り上げているとおりです。本来は議長が注意してしかるべきケースでしょう)。


質問の2)と3)については持ち越しとなりました。理由⇩

森会長「かなり発言時間を過ぎていますので、会長の判断で、

赤嶺君、奥野君の答弁はまたの機会に譲らせていただきます」



委員発言は以上。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/a78b889e3580a508d66a5c050563c12e1f59ef6f?page=1

まっとうな憲法報道に向けて 日本の立憲主義の課題は何か
長谷部恭男 早大教授に聞く
https://webronza.asahi.com/journalism/articles/2022042500003.html


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