団藤重光氏(だんどう・しげみつ=元最高裁判事、東大名誉教授、刑事法)25日午前5時48分、老衰のため東京都内の自宅で死去、98歳。(MSN 産経ニュース 2012.6.25 17:20)
法学者は長生きといわれますが、98歳はすごいですね。
久々に団藤重光「刑法総論」を本棚から出してきて、読み返してみました。
あれ~っ、そういえばこの本の名前「刑法綱要 総論」だったのですね。刑法総論、刑法総論としか言ってなかったもので、本当の書名を忘れていました。
刑法を勉強すると「行為」とか「違法性」とか「責任」とかいう概念をつきつめて考えるわけですが、団藤先生といえば、「人格形成責任論」です。
これは、道義的責任論(※)を基礎としつつも、二次的に背後の行為者の人格形成責任を問うという責任論です。
(※)人間には「自由意思がある」ということを前提に、この自由意思に基づいて違法な行為をしたことについて、行為者を道義的に非難できる場合に、刑事責任があると考える立場⇔社会的責任論~行為者の社会的危険性に着目しこの危険性を持つ者は社会防衛処分として刑罰を受けることが刑事責任であると考える立場
このごろ凶悪事件の裁判で、生い立ちの環境の悪さを強調して、あたかも本人には責任が無いかのような弁護(たとえば光市母子殺害事件)をするものがありますが、環境に影響されながらも、主体的に人格を形成してきた本人に責任を問う、もっともな理論です。
高校の授業では学べない、何か哲学的なにおいのする(実は哲学そのものなのですが)刑法の理論に、大学生になったんだなって思ったそのころの感覚が久々に蘇りました。
インターネットを検索すると、いまだに人格形成責任論の是非みたいなことを書いてあるブログもあるので、さすが団藤先生の理論だなと思いましたが、なんと、現役で売っているではないですか。
刑法綱要総論/団藤重光 |
1990年第三版になっていますが、たいしたものですね。
「巨人軍は永久に不滅です」じゃなくて「団藤重光の刑法綱要は永久に不滅です」ね。
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