鞘ヶ谷・北九州市立美術館と高見・七条。〈C〉著作権者: 永野宏三・ひろみプロ
八幡東界隈を漂泊していたらMさんから連絡があり、Mさんが所属している美術団体の展覧会に自作絵を出品しているので見てくれと云うので、旅路スケジュールを変更して戸畑の美術館に向うことにしました。
寒気団のせいでかなり寒いです。美術館が山の上なので戸畑駅からタクシーを拾いました。丘陵頂上に近づくにつれ、眼下に広がる関門海峡、響灘、洞海湾と市街を眺めながら10 分ほどで着きました。鞘ヶ谷の美術館に行くのは秋以来二カ月ぶりです。
北九州市屈指のスケールを持つこの丘陵に、双眼鏡を思わせるモチーフの北九州市立美術館が、辺りの深々とした森林の静寂な空間に絶妙に重なり合った造型を見せています。
Mさんは100号を中心に大作を9点出品していました。海外を旅してスケッチしたとものを油絵に描いていました。久しぶりに会ったMさんは、いつも人をたてる気配りばかりする人であまり自分のことを話さないのですが、歩んできた人生の話しをしてくれました。Mさんの事を知っているつもりでしたが、奨学金で苦学しながら学校を出たこと、幾つかの会社で仕事をしたこと、自分で店を持って商売をしたことなど自分史を話してくれました。いろんな仕事を経ても、絵を描くことは捨てなかったそうです。話すストーリーにMさんの魅力はこんなところにあったのかと、改めてひきつけられました。
山上はすごい寒さですけれど帰りは運動がてら、下りを歩いて美術館から八幡東区七条へ下りることにしました。風で揺れる木々の音が寒さを増します。豊かな樹木に囲まれた高見丘陵の自然歩道です。
歩くこと十五分。遊歩道を下ると高見から七条へ出ました。つい数年前まではヨーロッパの古い街並を思わせる八幡製鐵所の高等官舎が碁盤目状の通りに立ち並んでいました。現在は新しい居住区域とショッピングゾーンに整備されてすっかり趣きを変えました。八幡製鐵所の高見倶楽部は今も山手通りの一角にあり懐古なそして重厚な面影を残しています。