かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 226

2015年07月06日 | 短歌一首鑑賞

 渡辺松男研究28(15年6月)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)97頁
  参加者:石井彩子、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
        レポーター:曽我 亮子
        司会と記録:鹿取 未放

   
226 汗ばむということ秘密めきていて春霞する谷(やと)を行くなり

         (レポート)
 汗ばんでいるということは何か心に隠し事を秘めて昂ぶっているように見えるので、そのような気配を人に覚えられぬよう、春霞の立ちこめる谷間を隠れてゆくのだ。
 「汗」は端的に言えば「体温調節」の為にあるが、「精神的緊張」によっても出る。
 この「陰陽石」の一連は暗喩法を交えながら男女の「性的心象」が歌われており、今までの歌とはかなり異なった印象を受ける…。


        (当日意見)
★曽我さんが書いているように、汗ばむは性的なことに関連する。谷(やと)という言葉
 には女性のホトと共通する何かがあるようだ。(鈴木)
★今回の一連は性の交わりをおおきな自然の中でみていくという意図があるのではない 
 か。それを暗い感じではなく明るく性を讃えるという感じで詠っている。この歌は春霞
 があるところに露が降りている質感だとか、スモークがかかっているような質感が面白
 かった。(真帆)
★このⅢに収められている歌は、朝日歌壇に載った歌だと本人がおっしゃったか、どこか
 に書いていらしたかの記憶があります。ですから、Ⅰ、Ⅱから比べると比較的分かりや
 すい歌だと思うのですが。真帆さんがおっしゃったように、この一連は明るくというか
 天真爛漫という印象を受けます。性は別に隠すべきものではないという、陰陽石という
 題からしてあっけらかんとしていますから。私は楽しい一連として読みました。この歌
 についていえば、春霞する谷を歩いていると汗ばんできた、その汗にふっと秘密めいた
 性愛の場面などを思っているのでしょう。だから決して隠れて谷を行くわけではない。
   (鹿取)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿