渡辺松男研究28(15年6月)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)97頁
参加者:石井彩子、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:曽我 亮子
司会と記録:鹿取 未放
227 汗かけば別のまぶしき宇宙見え陰陽石が突っ立っている
(レポート)(15年6月)
一生懸命になれば異なった美しい世界が見えてきて男と女の二種の気の充ちた石(陰陽石)が突っ立っている。
・まぶしき宇宙=美しい世界 ・汗かく=一生懸命
・陰陽=中国の易学で相反する性質を持つ二種の気
男=日、春、東、昼
女=月、秋、北、夜 ( 岩波 広辞苑より)
この一首は暗喩で歌われていて、男が恋人を思い一生懸命自慰すれば性愛が醸され陰茎が立ち上がってくるのだ。 (曽我)
(当日意見)(15年6月)
★ネットで調べると、男のモノと女のモノが対で祀ってある、そういうのを陰陽石(いん
ようせき)というそうです。自然の営みの中にそういう陰と陽が存在している。汗をか
くのが一生懸命とか、まぶしき宇宙は美しい世界だとか、曽我さんのいうことはよく分
かります。(鈴木)
★私は「汗かけば」は226の歌の続きで読めると思います。谷を行きながら汗をかくと
昂揚して別の世界が見えてくる。その別世界に陰陽石が突っ立っている。あるいは昂揚
した気分になると、自分が踏みしめている大地が全く違う世界のように見える。そうい
うことってハイキングでも山歩きでもあることですよね。だから陰陽石は〈われ〉の頭
の中に見えていてもいいし、現実に突っ立っていてもいいと思います。しかもその陰陽
石はとても自然でおおらかに存在していたのだと思います。この歌は、だから男性身体
の暗喩ではないと私は思います。(鹿取)
★性愛のことを詠っているとは思いますが、スポーツをして汗をかくと別人になったよう
な気分がする。そんな感じかな、上句のすばらしさを思いました。(慧子)
★言葉の取り合わせがとてもおもしろい。宇宙ということば、陰陽石という言葉など。陰
陽石は神社の裏手などで見たことがありますが、子孫繁栄とかを願っているんですね。
おもしろい歌だと思います。(石井)
★先ほど慧子さんがおっしゃったのを聞いて、スポーツによる別世界というのがすとーん
と胸に落ちました。陰陽石は男性女性問わず生々しい生き物のようなぎょっとする感じ
がします。汗をかくと、この世とは別にある生々しい石の宇宙が見えてくるのではない
でしょうか。(真帆)
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