かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 363

2016年11月03日 | 短歌一首鑑賞
      渡辺松男研究43(2016年10月実施)『寒気氾濫』(1997年)【半眼】P148
            参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
            レポーター:泉 真帆
            司会と記録:鹿取 未放


363 君の乳房やや小さきの弾むときかなたで麦の刈り取り進む

     (レポート)
 362首目を受けての一首か。雨のぬらした君の洋服の胸元など、青春映画のようにも感じる。上の句の作者の仄かなエロスに、下の句の「麦の刈り取り」という実景を添えてリアリティのある歌。作者の視線の動きも伝わる。気をそらしたい気分か。(真帆)



       (当日意見)
★そうか、私はこれはメイクラブの場面かと読んでいましたが、なるほど、外の情景と取った
 方が良いかも知れませんね。一連の歌の場の中においても、その方が自然な解釈ですね。君
 が走ったりすれば乳房も弾むわけだし、「麦の刈り取り」も目に見えるものとしてあるわです
 ね。今までメイクラブと思って読んでいたので、自分たちは室内にいて夢中で抱き合っているが、
 彼方には「麦の刈り取り」という労働の現場があるのを頭の片隅で意識しているって思っていま
 した。他の人たちはどう解釈されますか。(鹿取)
★私は泉真帆さんの感じです。ただ、「雨のぬらした君の洋服の胸元」とかは感じないですね。外
 の状況でしょう。でも、どうにでもとれますね。(鈴木)
★青春性と麦が合いすぎているような気がする。さっきのそばえはよく合っていたんだけど。
   (慧子)
★うーん、私は麦を青春性とは思わないですね。むしろ、中年男の純情。だから、恋している自分
 にはかすかに麦苅りという労働に対する引け目がある。(鹿取)
★これ、春一番から季節的には移ってきていますよね。長い間に作った歌をまとめたんでしょうか。
   (鈴木)
★麦の刈り取りは初夏ですよね。だから薄着になって今まで隠れていた胸が現れた。(M・S)