馬場あき子の外国詠49(2012年2月実施)
【ロイス川の辺りで】『太鼓の空間』(2008年刊)178頁
参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:N・I
司会とまとめ:鹿取 未放
353 漂鳥はここに住みつき声あぐる栃の花蔭に椅子あれば座す
(当日意見)
★人間のありようと鳥のありようの二つの違い。(慧子)
★「漂鳥」とは「一地方の中で越冬地と繁殖地とを異にし、季節により小規模の移動をする渡り鳥。
夏には山に近い林にすみ、冬は人里近くに移るウグイスのほか、ムクドリ・メジロなど。」と広
辞苑にある。だからレポーターのいうように迷子になっているわけではない。(鹿取)
★鳥の名を言っていないのはあまり馴染みのない鳥か。もしくはウグイスなどのように分かりすぎ
て、ある情趣がまとわりついてしまうのを避けるためわざと言わなかったのか。あるいは漂う鳥
というイメージを大切にしたかったのか。次に白鳥の歌があるのだが、白鳥は通常長い距離を移
動するので「漂鳥」ではないように思う。ここでは、その「漂鳥」を栃の花蔭の椅子に腰掛けて
しばらく眺め、鳴き声に耳を傾けていたい気分なのだ。「椅子あれば坐す」をレポーターは「椅
子があったら座りたい」と解釈しているが、「あれば」は仮定ではなく已然形の確定条件だから、
「椅子があったので座った」ということ。(鹿取)
(レポート)
栃の花が今盛りである。渡り鳥が迷子になって住み着いて鳴いている。ゆっくり聞くために椅子があったら座りたい。(N・I)