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詩人・そらしといろのブログ~お仕事のお知らせから二次創作&BL詩歌まで~

【刀剣乱舞×詩】待ち人あり【 #刀剣詩】

2016-02-15 17:13:39 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
バレンタインデーだった昨日は、春一番が観測されたようです。
おかげで暖かく、近所の梅も一気に花開いて、春の訪れを嬉しく歓迎する反面、厄介な花粉症も到来してくれたようで、鼻がムズムズし始めております。
さて、今回の詩に登場するのは鶯丸膝丸です。
鶯丸と言えば、まだゲームには実装されていない刀「大包平」を楽しく話している刀。
膝丸と言えば、実装されたものの入手が難しい兄刀「髭切」を「兄者」と呼び慕う刀。
※なお、私の本丸には髭切がおらず、膝丸はいない兄者を呼び求める日々です。
なんだか似ている二振りの刀の、とこしえの春の日のこと。
タイトルは「待ち人あり」です。

………………

待ち人あり/そらし といろ

春告鳥はさえずる
深く沈んだきりの
彼方を弔うように

過ぎゆく時間を
すぐに忘れてしまう
ように忘れてしまわない
ために柔く噛んで温め続ける

おそらくは
名前のかたちをしている
言の葉の
艶めきは花の蜜のように
芳しく
とこしえに春を告げる鳥

鳥のさえずりで覚えた
優雅な彼の名前
麗らかなさえずりで
時の彼方を呼ぶ
ように呼ばれたい

傍らにはいない
兄の声を
彼のさえずりを通して汲む

最後の一滴ほど甘く沁みこんで

若葉は
うすみどりのまま
とこしえの春に揺られて待って居る

【刀剣乱舞×詩】襟巻に北風を巻きこんで【 #刀剣詩】

2016-02-04 16:13:40 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
昨日は節分、今日は立春。暦の上では春というやつです。
秋田藤四郎が以前仕えていた主は晩年、自宅での謹慎を命じられてずっと外へ出られなかったそうです。
とすれば、秋田君が外へ出られることやお土産話を喜ぶことは、前の主ができなかったことを代わりにやってあげているのかなぁ、なんて妄想が捗るわけです。
桃色の髪と空色の眼も、なんとなく、屋外や春をイメージさせます。
とはいえ、2月はまだまだ寒いので、季節の境目を秋田君視点で書いてみました。
タイトルは「襟巻に北風を巻きこんで」です。

………………

襟巻に北風を巻きこんで/そらし といろ

「春が来るよ」
誰かの訪れを期待するように
今日も誰かが口ずさむ
季節には足があるのだろうか
もしかすると羽根かもしれない

凍って動かない
窓硝子に滞在している冬
吐く息の白さを硝子に溜めて
指で描いた花の形の窓から覗く

庭の山茶花は散って
梅の枝先はほの明るい
空は曇りがちの日が続き
あともう一回雪を降らせて

冬は去ってしまうのだろうか

「冬が去るよ」
誰もそうは言ってくれない
また訪れるからと
挨拶も見送りもせずにいる
たぶんそれなりに寂しい別れ

寂しさを寂しく受け止めたい

冬のお見送りをしたくて
火鉢にあたり半纏を着て
それから
吐く息の白さを硝子に溜めて
指で書いた冬の日のできごと

今度いらっしゃるときは
お迎えに行きますね

【刀剣乱舞×詩】融点から離れて【 #刀剣詩 】

2016-01-23 16:27:35 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
今週の月曜日は、関東でも雪が降って交通機関が乱れに乱れました、さすが、大寒ウィーク。
どうやら明日も雪の予報らしく、暖冬とはいえ冬なのだなぁと。
ということで今回は雪からの連想で、江雪左文字視点の詩です。
無駄な争いを嫌う部分で刀よりも人間に近い彼が、武器の身であることの矛盾……。
タイトルは「融点から離れて」です。

………………

融点から離れて/そらし といろ

すべての命を
眠らせるように
雪の布団が世界を覆う

あらゆる呼吸を
吸収して積もる
雪が解ける日は
壮大なため息の
風が渡るだろう

息吹く喉を通過する
雪の日
曇りなき刀身が理解する
氷点下ほどの
悲しみに噛んだ唇の低い体温

あたたかいと
なにもかもを
ゆるしてしまいそうになる

氷点下にも
下がらなくなる
体温を忘れないために

雪の字を含む
あなたの名前を
繰り返し唱える
なによりも尊い
経文として

【刀剣乱舞×詩】語らい【 #刀剣詩 】

2016-01-08 19:14:40 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
新年が明けて一週間が経過しました。
お屠蘇気分は抜けつつありますが、なんとなくおめでたい印象がある一月上旬です。
お正月飾りや年賀状に鶴のモチーフを使う方もいらっしゃるでしょう。
そんなイメージの連想で、今回は鶴丸国永視点となりました。
鶴丸国永は様々な持ち主の手を渡り歩いた刀だそうです。
浮き沈みの激しい時代の波を乗りこなして今も現存することは、ある意味では運の良い刀なのかもしれません。
タイトルは「語らい」です。

………………

語らい/そらし といろ

年の明けるまでに数える
十秒が一秒ずつ
幾星霜の最前列へ連なる

取り零した一秒のために
滅びを訪れたり
逃げ延びた一秒のために
神々を訪ねたり

時間だって生き物だ
化け物よりもえげつなく
変化をしてみせて
これが今よ
そんな澄まし顔で
世を映し眺める目の玉を
くり抜けない歯痒さ

いっそ愛でてやる

連なる幾星霜の
数え切れない脱皮
新しい目の玉よ
まっさきに
まっさらに
おめでたい
鶴の剣を映せよ
唯一の日々を紡ぐ
羽根はただ白い

【刀剣乱舞×詩】天寿【 #刀剣詩 】

2015-12-24 18:26:17 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
獅子王を昨日、トーハクで見てきました。
ゲームのキャラクターとしては、金髪で元気な男の子という印象があるけれど、実際の刀はすごく落ち着いた雰囲気でした。
太刀らしい反りがありながら、何というか、真っ直ぐとしたきりっとした佇まいがありました。拵も黒漆に艶があって格好良かったです。
キャラクターの獅子王の性格は「心優しいおじいちゃん子」。
鎌倉時代から平成の今日この日にも存在し続けていることを、モノの目線、人の目線の両方で考えていそうです。
そんなことを想って書きました。
タイトルは「天寿」です

…………

天寿/そらし といろ

そこから数百年後の今日も
麗しい眼差しを保っている

黒漆の輝きがひとつ
消えてゆく瞬間を
星の寿命に例えたい

孤独に時間を越えて来続けて
居る麗しい眼差しへ注がれる
点滴のようにゆるやかな一秒

黒漆のまたたきが
この星が絶えたあとの
漆黒の時間へひらめく

瞬間の切れ目をいつ何者がひらいてゆくか

知らないまま
そこから数百年後の明日だけは
予感している天気予報によれば
夜も晴れ渡る

黒漆の眼差す先に
在る漆黒の時間を飲み干す
刃へ永遠風の輝きを湛えさせたい

人の眼差しの途絶える
夜の
頂を登って
何者よりも冷静に
時の寿命を感覚していた

【刀剣乱舞×詩】そして平らかになる【 #刀剣詩 】

2015-12-08 16:30:05 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
三名槍の一つである御手杵は、他の刀剣男士と比べると見た目は大人しい印象。
だけどとにかく、大きな槍だったらしいのです。リンク先のwikiにも“槍身は穂(刃長)が138cm”とあります、な、長い。
だから、存在感はすごくあるんじゃないかなぁと。槍に合わせて作られた鞘も大きかったようです。
そんな御手杵には「御手杵の鞘を抜くと雪が降る」という、なんとも神秘的な逸話があると知って、これは妄想がはかどります。
ということで、もう冬と言っていい寒さになってきたので、今回は御手杵視点で書きました。
タイトルは「そして平らかになる」です。


………………

そして平らかになる/そらし といろ

(……引き絞られた風に雪が混じる。
 縫い針の弓矢のように
 無防備な魂の器を射って雫へ還る。)

冬はつめたい
肉はぬるい

息はしろい
血はあかい

雪はしろがね
槍もしろがね

雪はとける
槍もとけた

雪は
槍は

(……窓の向こうは横殴りの吹雪。
 「寒くて痛いくらいだね。」
 と、つぶやく審神者なる者。
 半分ひらいた障子を隙間なく
 閉じた手の甲へはしる、あかぎれ。)

人は
だんだんに
こわれるから
手入れしながら
生きて
大事な部分がこわれて
終わってとけてなくなる

とけるときはきっとあつい

雪も
槍も
人も

【刀剣乱舞×詩】夢路【 #刀剣詩 】

2015-11-26 17:21:00 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
小夜左文字は、血にまみれた由来を持つ短刀。公式の設定では、人間に対して疑り深い性格だそうな。
そんな彼は内番の服装では、懐に柿を入れています。一応、歴史的逸話がそこに表現されているそうな。
柿のおいしい季節は夜も長くなってゆく頃なので、なんとなく、秋は小夜に似合うなぁと思って書いてみました。
タイトルは「夢路」です。

………………

夢路/そらし といろ

夕陽のように
落ちてはくれない

心臓のように
枝先へぶらさがる
熟柿をついばむ小鳥の

影も影へと溶けゆく季節

どんなものにも
ひとしく影はあたえられて
存在を許された

奪われた魂の
影が小さくなりゆく夜を
越えてもなお
磁場と同じく狂った足は
あの夜へ走る

眠る兄たちの
横顔を撫でる
指先に日向の
柿の生ぬるさ

そこより冷えることはなく

もぐり込む
布団のなかに作られた夜
人の形の自分が織る
あたたかな影を握りしめ
夢のなかを走る

あなたが凍えてしまわぬように
あたたかな影で夜ごと包みたい

【刀剣乱舞×詩】遺失物預り所【 #刀剣詩 】

2015-11-12 16:04:30 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
私が新選組にハマったきっかけの作品は、和月伸宏の漫画『るろうに剣心』でした。
なので、とうらぶの新撰組の刀には、つい、持ち主だった新撰組の面々を思い浮かべて、勝手にしんみりしてしまいます。
土方歳三の愛刀だったという、和泉守兼定堀川国広は、打刀と脇差ゆえに一揃いの、仲の良いコンビ。
きっと彼らは土方歳三という持ち主を大切に思っていただろうから、歳三の喪失は大きなものだったのではないかと、これまた勝手に妄想しています。だって、堀川が「兼さん!」と呼びかける裏側には「歳さん!」を感じずにいられないんですよ。逆に、和泉守が「国広」と呼ぶ時は、歳三が堀川を呼びかけるような雰囲気があって……。
すれ違いまくりながらも、土方歳三を思う気持ちは同じ、そんな彼らを妄想しました。
タイトルは「遺失物預り所」です。

………………

遺失物預り所/そらし といろ

1・近すぎて見えない

存在と崩壊の地点は表裏一体であること

その地点まで生きていた
熱い手のひらに握られる
希望を見出そうとした手を洗う

年若い美丈夫な相棒の
声が僕の名を紡ぐとき
熱い手のひらの気配が含まれて
かすみのかかる意識に潰されて

僕はもうずっと 彼の名前を上手く呼べていない

2・君は遠のいてゆく

薄くなってゆく気配に
怯える俺へ降り注ぐ声

「あの人が珍しく、
かくれんぼをしようって話だよ。
僕らが鬼だけど、
あの人は隠れるのが上手そうだ。
探し甲斐があるね。」

唯一無二の相棒の
穏やかな声帯のかすかな
震えを聞き逃すほど幼くない俺が
               (もしも あの人のようになれたら
                あいつはまたきっと笑ってくれる)

そう想ってから
あいつは笑顔を浮かべ
俺の名前越しに
あの人を 呼んでいる

【刀剣乱舞×詩】はじめまして、新世界【 #刀剣詩 】

2015-10-28 17:12:11 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
チュートリアル鍛刀でお迎えした短刀は、乱藤四郎でした。
初期刀が蜂須賀虎徹で、初鍛刀が乱藤四郎という、長髪好きな私を見抜いたかのように、長髪コンビが誕生しました。
乱(みだれ)のことをつい、乱(らん)と呼びたくなる、女の子のようなビジュアル。
もしも、乱藤四郎という短刀が男士というものに強く惹かれていたら、きっとこのビジュアルや声に不満を言っていただろうに、そんな気配が全くないあたり、これが自分のあるべき姿と認めているような気がするのです。
今回は「乱れ」という言葉から、何か定まっていたものが崩れること、はみ出たり、越えたりすることを連想して、書いてみました。
タイトルは「はじめまして、新世界」です。

………………

はじめまして、新世界/そらし といろ

はしる
跳ねて
はねる

乱れる
    呼吸といっしょに越えたよ

格好いい女のコ
        かわいい男のコ
 両方に憧れてもいいでしょう

毎日、七色に変わる空が好き。
だから髪は朝焼けに染めて、空色を目玉に嵌めこんだ。

日を
山を
時を

越える
    世界へ素直にひらいた五感

流れこむモノ
       流れ去るモノ
 越えて初めて知るモノ達

たった一歩で世界を移動しちゃう!
そんなの怖くて当たりまえだから。

こっそり隠れながらでいい
             一歩ずつ
                  進んでみよう

【刀剣乱舞×詩】夕べの景色【 #刀剣詩 】

2015-10-15 16:56:55 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
今回は、来派の短刀である愛染国俊と大太刀の蛍丸をイメージして書いてみました。
愛染は短刀なのでドロップでも鍛刀でも手に入りやすいですが、蛍丸を連れてくるのは難しく、私は鍛刀で呼び出しました。
(ちなみに蛍丸は近侍に長谷部/桜つき、550/650/750/550で来てくれました。)
愛染が自己紹介の時に語る「愛染明王」は愛染を藍染と解釈して、染色や織物の職人にも信仰された明王様だそうです。
その藍色から、夏の夜や川辺を連想して、愛染と蛍丸を作品でリンクさせてみました。
タイトルは「夕べの景色」です。

……………………

夕べの景色/そらし といろ

1・波紋

愛に染まる
(愛とつぶやく吐息の、くちびるの明るさ
藍に染まる
(藍のつぶやく吐息の、藍甕に沈んだ草原

夕暮れる空の端
わずかな炎のしずくを飲んだ
藍色はしたたる
野へ
  指へ
    あの子の浴衣へ

……どうしたって、あいの響きは、夏の夜へ降りたがる。

2・共鳴

光の届かない
こわれた砂時計から
失われる砂として光速度をはかりたい

海の底から
舞い上がり
這い上がる

流れをさかのぼって川へゆきたい

夏の川
仄あおく瞬く
宇宙と真水のあわいの
化身としての
名前を

くちびるからくちびるへ紡いで