citron voice

詩人・そらしといろのブログ~お仕事のお知らせから二次創作&BL詩歌まで~

何もかも捨てる美学

2009-06-04 22:15:33 | 日記
ゼミで俳句を作った際に、お手本として尾崎放哉の作品を読む機会がありました。
別件で大学の図書館で資料を探していた時、ふと、放哉の句集が目に留まり、手にしてパラパラ流し読んでみました。
放哉は自由律俳句の俳人で、五七五にとらわれない、本当に自由な言葉の流れを、自在に切り取っています。
特に

“何かつかまへた顔で児が藪から出て来た”

この一句が好きです。
一体何を掴まえてしまったんだい……!と、読者をドキドキ冷や冷やさせてくれる、日常で子どもが遊んでいる風景を放哉が切り取ったらこうなるのです。

“一本のからかさを貸してしまった”

これも、すごく気が優しくて、困っていると世話を焼きたくなって、自分も苦しいけれど、自分よりも誰かを想う姿が、雨を背景に浮かんできます。

と、直感的に放哉の作品は好きだと感じ、『尾崎放哉句集』春陽堂放哉文庫 を買ってしまいました。
エリート街道を踏み外し、家族も何もかも捨て、あちらこちらの寺を転々する日々。
でも、その流転流浪の生活の断片を切り取った言葉はとても美しいです。
無駄がない。何も持たない者が見て、感じて、切り取った言葉。

放哉の句から、新たな物語を作れそうな気がします、何となく。。。