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citron voice

詩人・そらしといろのブログ~お仕事のお知らせから二次創作&BL詩歌まで~

【刀剣乱舞×詩】吠えたい名がある【 #刀剣詩 】

2016-10-25 16:29:46 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
今回は髭切が審神者に語り掛ける詩にしました。
髭切は名前が何度も変わった刀で、ゲーム内では弟として登場する膝丸の名前も、うっかり忘れてしまうお兄さん。
ところで、ゲーム内で審神者は一応、プレーヤーとしての名前が登録されていますが、
刀剣男士たちは審神者を「主」や「主君」としか呼ばないんですよね。
刀剣男士たちが審神者の名前を呼ぶ日は来るのでしょうか?
タイトルは「吠えたい名がある」です。

………………

吠えたい名がある/そらし といろ

ねぇ君、僕の弟の名って、あぁそうだ、今はその名だった、
所詮ぼくらは物だから、気に入った名があっても、
持ち主の心次第で変わってゆくから、
よすがとするのはこの刀のみ、
今の主は君だから、君が新たに名づけても良いんじゃないかな、
ぼくが新しい名を覚えられるかは、微妙だけれど、
ところで、現世で君たちは、真名だけを名乗ると聞いたよ、
昔はとくに、高貴な人を真名で呼ぶことは避けていたから、
仮名が用いられて、呼んでいたということさ、
ぼくはぼくに与えられた名の数だけ、
大切にされていたんだろうとは思うけれど、
こんな風に肉体を与えてくれた君には、
歴代の持ち主とはまたちがった、執着を感じてしまうねぇ、
あぁ、そういえば、千年経っても戦はなくならなかったか、
人はあまりにも寿命が短いから、
ぼく以上に忘れっぽいのかもしれない、
それでも、人が絶えることなく在るのは、
膨大な数の誰かたちが、大切に繋いできたからなのかな、
ながいながい時間のなかで、
いくつもの名が生まれては消えていった、
君の真名を歴史のふちへ刻むことは、難しいことだ、
だから、せめてぼくらは君に仮名を贈りたい、
膨大な数の付喪神のぼくらが、君のもとへ現れて、
このときの、ぼくらの唯一の主として、
短い寿命を淡々と全うしてゆく君が、
ここでは、ぼくら以上に貴いものだからこそ、

【刀剣乱舞×詩】狐のいる夕間暮れ【 #刀剣詩 】

2016-10-13 17:48:49 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
今回は狐の字を持つ刀剣男士、鳴狐小狐丸視点の詩です。
鳴狐の名前の由来ははっきりとしていないらしいのですが、名前からは野生の狐や、化け狐のイメージが浮かびます。
ゲーム内での小狐丸は謡曲「小鍛冶」からのイメージだそうで、稲荷神社のお狐様っぽい雰囲気があります。
妖怪の狐も神様の狐も、紙一重で入れ替わりそうな、そんな危うさを妄想しました。
タイトルは「狐のいる夕間暮れ」です。

………………

狐のいる夕間暮れ/そらし といろ

1・鳴狐

黄昏時の風が奏でる
声のような一節に
振り向いてしまう君へ
一節のような声を
風に溶かして届ける

喉のみ化けて
魅せるひとときに
晴れる憂いがあるだろう

どうぞ 振り向いて
立ち止まって
黄昏時の風のなか
揺れる想いも
薄闇の幕の内のこと

2・小狐丸

ふっさりと垂れる稲穂
水面に化ける野辺の芒
夕暮に熟していく季節

ひぃやり渡る
風に梳かれて
いっそう輝く
こがね
しろがね
たまはがね

満ちてゆく命の囃子は調子よく
舞台はすっかり整った
誰も彼も踊りだす
大気の震えを写し取れ
今はすべてひとつに溶けるとき

【刀剣乱舞×詩】底なし【 #刀剣詩 】

2016-10-01 15:19:22 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
肌寒いと思った次の日は蒸し暑い。気まぐれな天気に振り回されながら、もう10月です。
今回は懐が大好きな秘蔵っ子、信濃藤四郎視点です。
短刀は懐刀にもなるので、人の一番の急所を守りつつ、人の心を読めそうだなぁと妄想しています。
審神者の懐のなかで信濃藤四郎は、はたして何を読んだのか。
タイトルは「底なし」です。

………………

底なし/そらしといろ

(永遠に
 あたたかな懐はあり得ず
 永遠に
 あたたかな懐を望む器はあり)

すべてを作った
空っぽな存在を崇めて
ひとは贄となり
「なにを作ってほしいの」

殺めてきたものを映す
瞳であたたかな懐を探す
飛び込めば受け止めてくれる
おおよそのことを許してくれる

「あなたは贄になってまで
この先に
どんな世界を作ってほしいの」

ゆるやかに殺めている
あなたを映す
瞳にも見通せない
あなたの
懐の闇が深まってゆく