駅。
人。
改札。
人間。
プラットホーム。
ホモサピエンス。
ベンチ。
ヒト。
電車。
人類。
線路。
……。
朝、乗るべき電車を乗りはぐってから、駅のホームにあるサビの浮いたベンチに座ってキジバトと一緒に、上り下りを問わず電車を見送っている。
初夏を通り越して、目玉焼きも破裂しそうな陽射しが、線路の果てを揺らしている。
瑞々しさよりも鬱陶しさが目立つ雑木林を背負った小さな駅でも、利用者が絶える時間はまだ、今のところ来ない。
キジバトは、工事現場のドリルみたいに忙しなく地面を掘削している、もとい、四六時中、飯の最中のようである。
コイツの充血した目が、家を出る前に覗いた鏡に映った自分の眼と似ている事に気が付いて、何故だか苛つく。
こんな、こんな四六時中地面を食べているような鳥類と似た容姿をしているだなんて、人類である自分には、受け入れがたい事実だ。
自分が座るベンチの隣に、ハトが座った。
ベンチを軽い足でひっかく音が、非常に耳障りだ。
手で払う真似をしても、こっちをじっと見てくる、なんという奴だ。
――ふぁーん……――
間延びした、電車のやって来る音が遠くで鳴る。
日に何回も聞いていると、段々、ふあん、フアン、不安と聞こえてきた。
ハトはまた地面を食べている。
そのハトを蹴散らすように、ホームの先端に走り寄る。
バサバサと慌ててハトが飛び上がるのを背中に感じる。
線路を食べるように電車が近付いてくる。
ホームの先端は、真っ白い夏の初めを切り取った陽射しの広場だった。
サビ付いたベンチは、高校時代の野球部の部室を思い出させた。
ハトは、いつでもどこでも地面を食べていた。
線路にドサッと落ちる、人、人間、ホモサピエンス、ヒト、人類の、浅ましい影。
また、電車を見送った。
線路が日差しの中で歪む。
ホームには、ハトと自分だけが取り残されている。
太陽が沈むまでの間、あと何回、線路に影を落とし、電車に食われれば気が済むのか、自分。
とうとう、ハトも夏の始まりの中へ飛んでいった。
――ふぁーん……ファーン……不安……――――
人。
改札。
人間。
プラットホーム。
ホモサピエンス。
ベンチ。
ヒト。
電車。
人類。
線路。
……。
朝、乗るべき電車を乗りはぐってから、駅のホームにあるサビの浮いたベンチに座ってキジバトと一緒に、上り下りを問わず電車を見送っている。
初夏を通り越して、目玉焼きも破裂しそうな陽射しが、線路の果てを揺らしている。
瑞々しさよりも鬱陶しさが目立つ雑木林を背負った小さな駅でも、利用者が絶える時間はまだ、今のところ来ない。
キジバトは、工事現場のドリルみたいに忙しなく地面を掘削している、もとい、四六時中、飯の最中のようである。
コイツの充血した目が、家を出る前に覗いた鏡に映った自分の眼と似ている事に気が付いて、何故だか苛つく。
こんな、こんな四六時中地面を食べているような鳥類と似た容姿をしているだなんて、人類である自分には、受け入れがたい事実だ。
自分が座るベンチの隣に、ハトが座った。
ベンチを軽い足でひっかく音が、非常に耳障りだ。
手で払う真似をしても、こっちをじっと見てくる、なんという奴だ。
――ふぁーん……――
間延びした、電車のやって来る音が遠くで鳴る。
日に何回も聞いていると、段々、ふあん、フアン、不安と聞こえてきた。
ハトはまた地面を食べている。
そのハトを蹴散らすように、ホームの先端に走り寄る。
バサバサと慌ててハトが飛び上がるのを背中に感じる。
線路を食べるように電車が近付いてくる。
ホームの先端は、真っ白い夏の初めを切り取った陽射しの広場だった。
サビ付いたベンチは、高校時代の野球部の部室を思い出させた。
ハトは、いつでもどこでも地面を食べていた。
線路にドサッと落ちる、人、人間、ホモサピエンス、ヒト、人類の、浅ましい影。
また、電車を見送った。
線路が日差しの中で歪む。
ホームには、ハトと自分だけが取り残されている。
太陽が沈むまでの間、あと何回、線路に影を落とし、電車に食われれば気が済むのか、自分。
とうとう、ハトも夏の始まりの中へ飛んでいった。
――ふぁーん……ファーン……不安……――――