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詩人・そらしといろのブログ~お仕事のお知らせから二次創作&BL詩歌まで~

【刀剣乱舞×詩】まぼろしの一振り【 #刀剣詩 】

2017-08-31 15:39:02 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
またもや日が空いてしまいました、お久しぶりの刀剣詩です。
今回は千子村正をイメージして書きました。
刀剣乱舞ONLINE(とうらぶ)Wikiによると、“「千子村正」とは、特定の刀の号ではなく、刀派「村正一派」の祖とされる室町中期の刀工・村正(初代)の通称で、彼の打った刀もそう呼ばれる。”とのこと。
千子はあらゆる村正の刀工の実践刀である面と、妖しい物語を持つ妖刀の面があって、本丸に顕現すればとある一振りになれる……顕現前の千子は、様々な村正の意識を秘めた状態でいるのでは、と妄想します。
どこか女性的な容姿や衣装も、意識の揺らぎを表すようです。
タイトルは「まぼろしの一振り」です。

………………

まぼろしの一振り/そらしといろ

空と水の色が重なりあうとき
地面は消滅してしまう
解放された重力
四方八方へ漂う花々の
その一片に身を委ねてもよい

大きな欠落の
ふさげない穴から風
変化はしても風化はさせない
風は気ままに集って
離散し集って

宙に放り出されて
はじめての孤独
孤独だけが静かに寄り添う
朝も夜もない空間で
寂しさもまた孤独に寄り添う
寂しさと孤独に声を
声を与えて欲しい

いびつな方が自然だったのだと
双子のような孤独と寂しさが
語り出した物語が風になる
隙間から荒野へ吹き渡り
やがて人々の耳へ届く




【刀剣乱舞×詩】風にそよぐ【 #刀剣詩 】

2017-05-30 13:53:51 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
久しぶりの刀剣詩の更新、今回は数珠丸恒次です。
数珠丸の元の持ち主は、日蓮宗の祖・日蓮が護身用に持っていた太刀で、柄に数珠が巻かれていたと言われています。
キャラクターとしても、お坊さんの雰囲気がある台詞が多く、彼の台詞に思わずぎくりとすることも……。
伏せられた目元が印象的な数珠丸は、どんな想いで刀として在るのか。そんな妄想をしました。
タイトルは「風にそよぐ」です。

………………

風にそよぐ/そらしといろ

蓮の花
    木蓮
        睡蓮
             蓮華草

場所を
姿をかえて
祈りのかたちに花は咲く

祈りのかたちに鞘のなか
咲くと等しい
裂くことに

野をゆく風は
無邪気に葬儀を仕切る

意思のある太刀風は
地獄のにおいを熟れさせる

こんなにも重たい地上で
軽やかに咲く花々の
淡々とした営み

抜刀しない手は
花のつぼみのかたち
そよぐ風にこぼれる朝露

【刀剣乱舞×詩】鞘に収めて帰ります【 #刀剣詩 】

2017-03-31 17:04:32 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
日本号とほぼ同時期に、当本丸にも明石国行がやって来ました。
「なーんもやる気せーへんので。」と自己紹介するほど、やる気のなさを売りにしているキャラクター。刀の来歴としては、「明石国行」と呼ばれるようになった播磨国明石藩主松平家に伝わる以前のことは不明のため、ミステリアスな面もあります。
「明石国行」以前の記録・記憶を隠しているようなキャラクターでもあるのかな、と妄想しました。
タイトルは「鞘に収めて帰ります」です。

………………

鞘に収めて帰ります/そらしといろ

ここに在る影が伸びる方角を眺める君のつむじを眺める目があること。

(古い記憶を錆ごと愛したら楽だろうよ。
落とすことを怠った錆の下で崩れていった記憶の空白を愛していると胸を張って言えばいいじゃないか。
なにかが消されて生まれた物語に言葉はなくて果てることのないすすり泣きは小鳥の囀りではないのに。)

怠らずに落とした錆の下になにもなくても落ち込むことはない。
自らの手で遠い景色を見ようと想ってくれた君が主で良かった。

予めなかった記憶
        (のための物語
ないとされた記憶

その違いを見誤るような君ではないと信じているから過去へ飛ぶんだ。
君たちがほんとうに守りたいものはこの鋼の身体ではなくて刃にもなる言葉たちだから過去へ飛べるんだ。
諸刃とはいえ刃の言葉が言葉を狩る時空へやわい君をひとりで放り出すほど無慈悲な神になりきれなくて過去へ飛ぶんだ君の代わりに君たちの代わりに。

ここに在る君の影が伸びる方角を眺めるこの目が選んだ道を歩むかは君次第だけれど。


【刀剣乱舞×詩】うたげ【 #刀剣詩 】

2017-02-28 19:23:03 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
やっとこさ、当本丸にも来てくれました、日本号
黒田節に歌われている槍が日本号ということで、ログインボイスでも日本号が歌っています。
酒好きで黒田節を歌う陽気なキャラクターと思いきや、真剣必殺では文字通りに目の色が変わり、龍の彫り物が美しい槍の、鋭利な姿がふと頭をよぎりました。
実物は見たことがないのですが、「刀剣乱舞 おっきいこんのすけの刀剣散歩」にて日本号を拝見した次第です。
日本号と、かつての主たちの酒宴を妄想して書いてみました。
タイトルは「うたげ」です。

…………………

うたげ/そらしといろ

ひろがって
ふかまってゆく
闇にかける鍵はない

ひたりと
打ち寄せては
なにかを削ってゆく

えぐれた岸辺を消毒する
酒精が尽きる
日を映してはくれない
龍の眼は凪

(龍の涙は美酒だって
 誰も知らなくていい)

螺鈿のうろこ
 しみる
消毒の酒精
 いたむ
此岸を彼岸を
 うたう
声を重ねて


【刀剣乱舞×詩】言祝ぎ【 #刀剣詩 】

2017-02-10 18:43:41 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
ゲーム内にて、鶯丸がずっと呼び続けた彼が、大包平が実装されました!
しかし、今は彼を入手できず、レアリティも一番高いため、未だに幻のキャラクターです。
そんな大包平は、名刀によくある逸話があまりなく、池田輝政に“もっとも美しい刀”と見出されて、童子切安綱と並び「日本刀の東西の両横綱」と言われるようになったそうです。
刀としての特徴は、大振りなのに軽いということ。美しく、大きくても軽いという刀そのものの良さだけで今に伝えられることは、むしろシンプルな強さのように思います。
“美しい”という一言であらゆるものを越えてしまった、大包平を想いました。
タイトルは「言祝ぎ」です。

………………

言祝ぎ/そらしといろ

……おまえがもっとも美しい――

今日も永らえる
ただひとり
ひとつの言葉で

たとえば
分厚い物語の
束から抜け落ちた
ありふれた話だとして

軍配を挟んで向かいあう
決しない勝負のために
誰を傷つけることもない
ほがらかな土俵のうえ
流れゆく時さえ軽やかだ

ありふれてあふれて
物語にもなれない
言葉のひとつが
超越する

幾年も幾星霜も
変わらずに
響く声があれば

――おまえは今日も美しい……

【刀剣乱舞×詩】こぼれてしまう【 #刀剣詩 】

2017-01-27 18:08:29 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
鍛刀イベントでは来なかった大典太光世が、連隊戦イベントでやって来ました。
病魔を祓う刀として前田家へ伝来し、その霊力の強さから収めていた蔵には鳥も寄らない、という逸話があるそうです。
霊力でもって人を救う刀かもしれないけれど、病魔は確実に祓われて消滅してしまう。
ゲーム内でも霊力の高さを悩んでいるキャラクターのようで、強面な見た目とは裏腹に繊細な性格のようで、そのあたりを妄想しました。
タイトルは「こぼれてしまう」です。

………………

こぼれてしまう/そらしといろ

弱々しく絶えてゆく
病魔の息を聞いたか

彼らには毒の
清い力に苦しみ
倒れ伏す鬼を見たか

苦痛を与えない
つよい力をと願えば
小鳥の命を吸う

刀で
力で
清らかさで
救いきれない
あらゆる命が在る世界

無邪気な退魔のまじない
おにはそと おにはそと

苦しまないことを
望んだときから
すでに苦しい
掌をせめて
ひらいて

分け合う
苦しみから漂う
人肌の潮の未知の感覚を
愛しく想うのは
何故か

【刀剣乱舞×詩】火のような知恵【 #刀剣詩 】

2017-01-13 18:16:07 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
昨年の秋に鍛刀イベントで実装された小烏丸、弊本丸では運よくお迎えできました。
桓武天皇が八咫烏から授かった太刀という逸話から、小烏丸と名付けられたそうです。
八咫烏は神や太陽の化身だそうで、小烏丸は宇宙的な刀だなぁとも思います。
ゲーム内のキャラクターとしては、日本刀の父として振る舞う稚児のような少年です。
神話を背負っているからこそ、永遠性の象徴のように少年の姿の父なのかな、と妄想しました。
タイトルは「火のような知恵」です。

………………

火のような知恵/そらしといろ

ひかりのなかで焦げてゆき
影へ与えられた漆黒の渇き

それが遠い日の分岐点

潤む火より産み落とされ
焼きつくすことに等しい
影の渇きが地を侵略した

仰々しい影を得た日

 れ
 されたものの
残響に包まれながら
僅かに微笑んだとおもう

そこからの分岐点の尖端に
生まれたものは
死者のような永遠を持って
寂しそうに笑う

 潤む火の
 落としものであった
 この身を拾った
 手へ負わせた
 火傷の鈍い痛みこそ
 鋭利に研ぐべきだったか

【刀剣乱舞×詩】空っぽの手【 #刀剣詩 】

2016-12-28 16:04:16 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
今回は包丁藤四郎のイメージで詩を書きました。
短刀なので可愛らしい少年のキャラクターですが、自己紹介の「好きなものはお菓子と人妻!」というセリフに鶴丸もびっくりの驚きをもらいました。
包丁君のセリフは元の持ち主の徳川家康の性格・性質に由来するそうで、「人妻は頭撫でてくれるし、お菓子くれるし、最高だよね。」と、徹底した人妻推しのセリフが沢山(笑)。
彼が人妻が~と言うときに、なにか優しさを求めているようで、それが気になっていました。
彼からは、自分から遠いものほど憧れてしまう、ある意味の人間らしさも感じます。
タイトルは「空っぽの手」です。

………………

空っぽの手/そらしといろ


星の瞬きを掴むような、あこがれ

表と裏の背中合わせは
寄り添っている風を装って
瞬きを交わせないほど離れている

激しい温もりを肯定する、優しさ

手入れをする
手の静かを味わう
ひとときは安らかに甘い

道具として働いたあとの
傷だらけのからだ
確実に
なにかを奪って奪われた
虚脱は
菓子のように甘い
手入れのひとときを求め

あなたの僕への優しさは
誰かへの刃になるのかな

手の静かは
なにも掴まないままが
いちばん優しいだなんて
気付いてしまって
もっと焦がれて
あこがれる



【刀剣乱舞×詩】冬眠【 #刀剣詩 】

2016-12-15 17:14:17 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
ソハヤノツルキは、徳川家康が所持した刀でした。
刀剣乱舞におけるソハヤノツルキは、自分は写しだからと自身を卑下するセリフがありますが、実際にソハヤの剣をお手本にして打たれた刀ではなく、霊剣であるソハヤの剣の霊力にあやかって名前を付けられたそうです。
写しと言っても、山姥切国広とは事情が少し異なるそうな……。
家康はソハヤノツルキを通して、鬼神を退治した逸話を持つソハヤの剣の霊力を信じていたのでしょう。
ソハヤ、という響きから風をイメージして、霊力の通り道としてのソハヤノツルキを妄想しました。
タイトルは「冬眠」です

………………

冬眠/そらしといろ

付された名のもとに道を繋ぐ
時間が存在できない空間から
色も匂いも音もなくとおる風

まにまに
冴えてゆく
切っ先
みなぎって
溢れ出す
清冽な霊力

大風がわたる
善悪のひとつもない
世界を刹那に存在させて
張りつめる無音を切り裂いた
鬨の声のような産声に熱くなる刃

無限よりも
したたかな有限
あるいは幽玄の
灯火は鬼火のように湧く

此岸と彼岸を繋ぐ名へまつわる
物語の上質な御簾は
そよとも動かず今日も暮れゆく

【刀剣乱舞×詩】結べない夢【 #刀剣詩 】

2016-12-01 16:04:21 | 二次創作詩=漫画/アニメ/ゲーム×詩
新詩集の刊行や文フリの準備もあって、久しぶりの刀剣詩になりました。
今回の刀剣男士は、織田信長に愛され、森蘭丸が拝領したと言われる短刀、不動行光です。
信長が酒に酔って機嫌よく不動行光を誉める歌を歌ったところに由来するのか、不動君はいつも甘酒を片手に酔っぱらった状態。
でも、どこかで「酔ってないとやってらんねー!」と思っているのかな、と妄想しました。
タイトルは「結べない夢」です。

………………

結べない夢/そらしといろ

あまい匂いを鞘として
ここに在ることは
途切れた時間の
傷口からも
鮮やかな時間が
細く長く流れ出て
運ばれている途中だと

降りられない船として
時間は多くを積む
どこへ降ろすか
予告されず
降りたつもりで
別の船に乗り継ぎ
運ばれている途中だと

揺れる船
立っていても
座っていても
瞬く間に去る景色
追いつけない
瞬きを諦めて
酒を汲む

あまい匂いを鞘として
ときの狭間を浮遊する
物だから泳げはしない
降りられない船として
時間が積むものたちは
運ばれている途中だと

運び終わったものもあり
ここにはないものもあり

澄む酒の
上澄みは
ないものばかり
鮮やかに映して
また一杯
酒を汲む